特定技能制度の自動車整備分野で、主な業務に板金塗装(BP)が加わった。特定技能外国人は関連業務としてBPに従事できていたが、今後は専従とすることができる。政府が8月末に閣議決定した「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」の変更で決まった。車体整備工場も整備業全体と同様に人材不足の課題を抱えており、外国人の活用は不可欠だ。BPに関する特定技能の業務範囲が広がることで、こうした課題の解消に向けて一歩を踏み出した格好だ。

従来の特定技能制度では分解整備をメインに、外国人を受け入れていた。政府は今回の方針変更で、自動車整備で従事できる業務を分解整備から特定整備に変更した。特定整備には従来の分解整備に加え、先進運転支援システム(ADAS)のエーミング(機能調整)作業を行う「電子制御装置整備」が含まれる。エーミングはBPでも欠かせない作業となっているため、特定整備に付随する業務としてBPを加えた。これにより、特定技能外国人を雇用している認証工場では、BPを主業務として従事させることが可能になった。
BPは事故を起こした車両を修理する上で、ADASや自動運転のシステムの機能維持にとって重要な領域の一つ。BP事業者は交通事故件数の減少を受けて売上高が減少傾向にはあるものの、高度なBP技術を維持し、将来に継承していくことも求められている。外国人技能実習制度の自動車整備でも関連業務としてBPが認められている。今回、特定技能制度にもBPが加わることで、外国人の人材活用で選択肢が広がることになる。
特定技能制度は人手不足が深刻な産業分野で、専門性や技能を持つ即戦力の外国人を受け入れる仕組みで2019年にスタートした。自動車整備は在留期間が最長5年の「特定技能1号」が創設されており、19年度から5年間で最大6500人の受入数を見込んでいる。出入国管理庁によると、6月末時点で1220人(速報値)の特定技能外国人が在留している。国籍別ではベトナムやフィリピン、インドネシアが上位で、アジアで99.9%を占めている。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月6日号より