経済産業省は、「合成燃料(eフューエル)の導入促進に向けた官民協議会」を立ち上げた。モビリティ分野での商用化に向けたロードマップ(工程表)の策定などに官民で取り組んでいく。合成燃料は既存の内燃機関車でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)化に対応できると期待される一方、水素のコストや調達面での課題も多い。電気自動車(EV)以外のゼロエミッション車の選択肢として道筋をつけられるか注目される。
協議会には、日本自動車工業会などの需要側と、石油連盟や全国石油商業組合連合会といった供給側が参画し、需給双方が現状と課題を共有し、議論を進める。自動車などモビリティ分野でのロードマップ策定やサプライチェーン(供給網)構築などを検討する「商用化推進ワーキンググループ(WG)」と、二酸化炭素(CO2)の削減効果を評価する仕組みなどを整備する「環境整備WG」の2つのWGを協議会の傘下に置き、政府への提言内容などをまとめる方針だ。
合成燃料は工場などから排出されたCO2と水素を合成した人工的な燃料で、化石燃料と同等のエネルギー密度を持つ利点がある。再生可能エネルギー由来の水素を用いたeフューエルは、既存の内燃機関車をゼロエミッション化する次世代燃料として期待されている。
一方、合成燃料の社会実装の最大の障壁となるのは水素の調達だ。16日に行われた初会合では、現状、調達から製造まで全て国内で完結する場合の製造価格は1㍑当たり約700円との試算が示されたが、コストの大半を占めるのは水素だ。海外から水素を調達する方法もあるが、安定した量を確保するためにも、国内で供給網を構築することが重要になる。合成燃料をガソリンと同等にまで価格を引き下げるには、水素を生成する際に使う再エネのコストをどれだけ低減できるかがカギを握ることになる。
政府が「グリーンイノベーション基金」で示した合成燃料の推進目標では、合成燃料の価格がガソリン以下になり、商用化が進むのは2035年以降の見通し。官民一体となった協議会で、技術開発とエネルギー価格の低減などに取り組み、35年に向けた普及シナリオを描いていく考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月20日号より