経済産業省は、全固体電池の開発支援で新たな取り組みを来年度から始める。性能評価用の標準電池モデルをはじめとする評価基盤技術の確立に取り組むほか、電極やセル(単電池)に用いる新材料の開発を支援する。市場が確立していない全固体電池は、日本が研究開発をリードするが、中国・韓国勢も猛追している。経産省としては、日本企業が一定のシェアを持つ材料領域で開発を支援し、電池領域の産業競争力を保ちたい考えだ。
来年度からの5年間で約100億円を投じる方針だ。評価技術の確立を通じ、全固体電池用の電極やセルの新材料を効率的に探せるようにし、開発を後押ししたり、製品化時のリスクを減らしたりする。将来は全固体電池の標準化もにらむ。
全固体電池は、現在車載用などで主流の液系リチウムイオン電池(LIB)を超える性能の次世代電池として期待されており、日本政府は2030年頃に本格的な実用化を目指している。LIBでは、日本勢が優勢だったが、市場が拡大するに連れて中韓勢が果敢な増産投資でシェアを拡大した経緯がある。
ただ、LIBでも電極や電解液、セパレーターなど電池材料ベースでは日本勢が一定のシェアを確保しており、特に安全性など品質では中韓勢をリードする。経産省としては、材料領域に集中して支援を行うことで、車載や定置用、民生用などの全固体電池市場で日本企業が競争力を保てるようにする。
経産省が8月末に公表した新たな「蓄電池産業戦略」では、30年に日本企業が世界で年間600㌐㍗時のLIB供給能力を確保するとともに、全固体電池について、30年以降も技術的優位性を保つことを目標に掲げた。全固体電池の新たな開発支援はこの一環で、同省はこのほかにも「ハロゲン化物電池」や「亜鉛負極電池」など、革新型電池の基礎研究も支援し、30年代半ばの実用化を目指していく。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月30日号より