国土交通省は、鉄道、バス、タクシーなどの交通事業者と自治体などが地域全体で取り組む交通サービスに、事業改善インセンティブや複数年の予算補助を行う制度を2023年度に設ける。自動運転やMaaS(サービスとしてのモビリティ)など、デジタル技術を活用し、地域の課題解決や活性化にもつなげる。オンデマンド型送迎バスの運行をはじめとする移動支援サービスやカーシェアリング、レンタカーなどを展開する自動車販売会社でも、参画を通じて新規事業の創出や顧客サービスの拡充が期待できそうだ。
国交省は7日、交通政策審議会交通体系分科会の第20回地域公共交通部会を開いた。有識者のほか鉄道、船舶、バス、タクシーなどの交通事業関連団体も出席。地域公共交通網の再構築に向けて、官民による新たな取り組みを喚起する仕組みづくりに乗り出した。
検討を進める新たな支援制度は、従来の系統単位ではなく地域一括で、かつ複数年にわたる補助とその概算額確定が事前に行われるようにする。自治体が運行委託する交通事業者は個社だけではなく、モードが異なる複数の交通事業者間の連携も想定している。
交通事業者が自ら積極的にサービス水準の向上や運行の効率化を行うインセンティブの創設や、交通事業者が金融機関からの融資を確保しやすくするための方策なども検討する。移動の付加価値を高める投資を喚起する多様なメニューで、地域の実情に応じて選択できることを目指す。
自動運転や車両の電動化、コネクテッド技術などの社会実装も進めながら取り組んでいくため、地域で店舗を構える自動車販社が担う役割も大きい。全国で移動支援サービスの実証実験を実施している販社も増えており、将来の事業化にも関連する動きとなりそうだ。
自治体が交通事業者に運行委託する際、サービス水準の検討などに当たり、地域公共交通活性化再生法に基づく協議会(法定協議会)の場を積極的に活用してもらう。地域交通に関して包括的に議論する官民共創を図るための場として環境整備も進めていく。
人口減少や高齢化に加えて、感染症拡大の影響でテレワークなど新しい生活様式が定着し、今後も交通需要の回復は見込みづらい。交通サービスが運賃収入のみによる独立採算を前提に存続することは、これまでにも増して困難な状況だ。持続可能な地域公共交通の再構築に向けて、交通事業者と地域の協働による地域モビリティ刷新を図る。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)10月8日号より