物流業界の時間外労働が規制されることで生じる「2024年問題」への対応が急務になっている。トラックドライバーの運転時間などを定める「改善基準告示」の見直し案が示された。1日に必要なドライバーの休息時間が現行の「継続8時間」から「継続9時間」に延ばされるなど、労働環境の改善を重視した基準が2024年度から適用される。物流企業には新基準に応じた労務対応が求められるが、足元ではドライバー不足や燃料費の高騰などで厳しい事業環境下にある。安定した物流網の維持はサプライチェーン(供給網)の強靭性にもつながることから、官民一体での対策が求められる。
24年4月1日に施行される働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働時間が年960時間以内に制限される。これに向けて厚生労働省はこのほど、24年度以降のドライバーの労働条件の基準となる改善基準告示の見直し案を提示した。
新基準では、1カ月間の原則の拘束時間を、現行の293時間から284時間に短縮し、1年間の拘束時間に関しても現行の3516時間から原則3300時間以内に縮小する。終業から次の始業までを指す休息時間に関しては、現行は1日継続8時間と定めているが、新基準では継続11時間を努力義務とし、継続9時間以上を義務化する。トラックだけでなく、バスやタクシーのドライバーに関しても同様で、24年4月からこの新基準が適用され、違反した場合は労働基準監督署から指導が入る。
国際労働機関(ILO)は、休息時間を連続10~11時間に定めているほか、欧州連合(EU)も11時間以上の休息の取得を義務化している。努力目標の範囲ではあるが、今回の改定で日本もこの国際水準に届くことになる。ただ、厚労省が昨年度に全国約8400人のドライバーを対象に実施した調査では、4人に1人が1日の休息時間が「8時間以下」と回答しており、現状のままでは新基準の達成が困難なケースも少なくない。
加えて、担い手となるドライバー不足は深刻で、日本ロジスティクスシステム協会によると、30年には15年比で国内のトラックドライバー数が3割減るとしている。電子商取引(EC)の拡大で宅配や輸送需要自体は増加しており、需給のギャップが広がる中で安定した物流網の維持が大きな課題になる。
この現状を受け、政府も物流拠点施設への財政融資やパレットの標準化など、物流の効率化に向けた取り組みを進めている。ただ、「労働環境の改善と安定した物流網の両立には、個々の企業に(自社の取り組みを)根本的なところから見直してもらう必要がある」(厚労省)という。今後1年半以内に新基準に適応できる環境整備ができなければ、24年問題を乗り越えるのは難しくなる。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)10月13日号より