トヨタ自動車の豊田章男社長らは2日、首相官邸を訪れ、岸田文雄首相らと会談した。日本の基幹産業である自動車産業が「モビリティ産業」として国際競争力を維持し、日本経済の主軸として発展していくための課題などを官民で協議した。豊田社長は会談後に記者団の取材に応じ「モビリティをペースメーカーとしていく方向性についてコンセンサスが取れた」と語った。サプライチェーン(供給網)をめぐる地政学的なリスクなどを含め、今後も協議を続ける見通しだ。
政府側からは、岸田首相をはじめ西村康稔経済産業相、松野博一官房長官らが出席。経済界からは、日本経済団体連合会(経団連)モビリティ委員会の枠組みとして豊田委員長、有馬浩二委員長(デンソー社長)、片山正則委員(いすゞ自動車社長)、日髙祥博委員(ヤマハ発動機社長)らが出席した。共同委員長を務める十倉雅和経団連会長も参加した。
自動車のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)をめぐっては、欧米で電気自動車(EV)関連投資の囲い込みが加速している。会談ではこうした状況を踏まえ、日本の自動車産業の競争力強化について意見を交わした。岸田首相は「自動車産業は経済の大黒柱であり、モビリティは『新しい資本主義』の中軸になる。歴史的転換期を迎え、経済や雇用を守り抜くためにも官民が連携していく」と語った。
自動車業界の賃上げも評価し、継続的な取り組みにも期待感を示した。
経団連のモビリティ委員会は、幅広い産業から約200社が参加し、自動車を軸にモビリティ産業として連携の枠組みを広げることで経済効果や雇用の維持・拡大を狙っている。
豊田委員長は「モビリティという大きな概念が大事だ」と話し、自動車産業の枠組みを広げ、新たな発想に基づく骨太な政策の実行を政府に期待する。日本政府は、来年5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向けて「日本版グリーントランスフォーメーション(GX)」を示す方針だ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)11月4日号より