世界の主要国も電気自動車(EV)の普及策を積極的に展開し、EVの購入や充電インフラの整備、車載電池工場の新設などに巨額の補助金を投入している。
2030年に新車販売台数の半分をEVなどの電動車にする目標を掲げる米バイデン政権は22年8月、EVや再生可能エネルギーの普及に合計3900億㌦(約50兆円)を投じることを決めた。EV充電設備を50万基設置するための補助金や、EV購入を促す税額控除制度の拡充、電池工場の新増設支援などに充てる。
欧州でも、欧州連合(EU)が35年にハイブリッド車を含む内燃機関の新車販売禁止を打ち出し、EVの普及を促す補助制度を推進中だ。フランスは23年から低所得者世帯向けにEV購入補助金を増額するとともに、公共用EV充電器を23年6月までに10万基に増やす。EV関連に年間約1兆2千億円もの財政支出を30年まで続ける。
ドイツは、2年間でEV導入支援に約4800億円、急速充電インフラに約2800億円の合計7600億円の補助金を用意する。22年末でプラグインハイブリッド車(PHV)の購入補助金を打ち切り、補助対象をEVに絞った。
補助金という「カンフル剤」によって市場が拡大してきたEVだが「出口戦略」を模索する動きもある。中国政府は、EVなど新エネルギー車(NEV)の購入補助金を22年末で打ち切った。販売への影響が注目される。
一方、ハイブリッド車(HV)の普及が先行した日本では、新車販売に占めるEV比率が先進国の中では低い。EV関連の補助金も年間1千億円程度にとどまる。ただ22年度は、軽EVの販売好調で補助金執行のペースが例年より早く、補正予算で予算を追加したため、総額1200億円と「近年では最大規模」(経済産業省)になった。
世界で大盤振る舞いされる補助金も、もともとの原資は国民が納める税金だ。今後は補助政策の費用対効果を吟味し、より実効性を高めるフェーズに入りそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月1日号より