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自動車業界トピックス

〈年頭インタビュー〉斉藤鉄夫 国土交通大臣 交通・物流分野でも「DX」「GX」

 2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けて、運輸分野もデジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みが重要になる。地域交通の活性化や働き方改革も待ったなしだ。斉藤鉄夫国土交通相に自動車行政の展望を聞いた。

―運輸交通分野のDX、GXの方向性は

「運輸部門は日本全体の二酸化炭素(CO)排出量の約2割を占める。交通事業者の経営効率化や経営力の強化を図るためにも、交通・物流分野のDX、GXを強力に推進する必要がある。このため、22年度第2次補正予算と23年度当初予算案で、これらを支援する経費として400億円以上を盛り込んだ」

「さらに、23年度以降は新たに財政投融資も活用して支援を拡充する。交通分野では、MaaS(サービスとしてのモビリティ)の実装や自動運転の実証調査事業、電気自動車(EV)の車両や充電器設備の導入、エネルギーマネジメントシステムの構築などを支援していく」

―事業用自動車の電動化促進に向けた取り組みは

「日本は50年カーボンニュートラルの実現や、温室効果ガスの30年度46%削減などの高い目標を掲げている。国交省では、自動車交通分野におけるカーボンニュートラルの実現に向け、事業用の電動車などを購入する事業者などに対して補助を行っている。22年度の補正予算でも『事業用自動車における電動車の集中的導入支援』として、前年の倍となる20億5千万円が認められた。今年は『GX経済移行債』なども活用し、関係省庁とも連携して電動車を導入する運送事業者などへ支援を進めていく」

地域交通の再構築にも取り組む(富山県富山市)

―地域交通に対する現状認識や課題の解決策はどうか

「地域交通は、地域の活性化や『デジタル田園都市国家構想』の実現に不可欠だが、新型コロナウイルスの影響などで多くの事業者は厳しい経営状況にある。昨年6月に閣議決定した骨太の方針では『従来とは異なる実効性ある支援などを実施すること』とされた。これを踏まえ、国交省に設置した2つの有識者検討会で昨年夏に提言がなされ、現在、交通政策審議会で『地域交通のリ・デザイン(再構築)』の新たな制度、支援のあり方などの議論を進めている」

「22年度第2次補正予算でも地域交通の再構築について800億円以上を計上した。23年度当初予算案にも新たな支援の枠組みを盛り込んだ。通常国会への法案提出も含め、今年を『地域交通のリ・デザイン(再構築)元年』とすべく全力で取り組む」

―運賃・料金の適正収受など物流業界の課題への対応は

「物流の足元の課題は燃料油価格の高騰だ。政府の経済対策の一環として、燃料などの価格上昇分を反映した適正な運賃・料金収受のための荷主などへの周知や、法令に基づく働きかけなどを行う」

「物流の構造的課題には、トラックドライバーの時間外労働時間規制、非効率な商慣習、多重下請け構造などがある。これまで、物流事業者と荷主との取引環境の改善に向け、トラック運送事業における『標準的な運賃』の周知・浸透などの取り組みを進めてきた。さらなる取り組みに向けては、発荷主・着荷主や一般消費者の理解が不可欠だ。昨年9月に国交省、経済産業省、農林水産省の3省合同で『持続可能な物流の実現に向けた検討会』を立ち上げ、議論を進めているところだ」

―物流の「2024年問題」への対応はどうか

「トラックドライバーは、他の労働者と比べて労働時間が長く、低賃金であることから、近年は有効求人倍率が約2倍のまま推移するなど、担い手不足が課題となっている。ドライバーの労働条件を改善して、魅力ある職場づくりを行うことが急務だ」

「こうした中、トラックドライバーの労働時間を改善するため、24年度から時間外労働の上限規制が適用されるとともに、ドライバーの総労働時間、運転時間などを定めた『改善基準告示』も見直される。改善基準告示を順守することは、ドライバーの健康や国民の安全確保、担い手を引きつける『魅力ある職場づくり』の観点から極めて重要だ」

「厚生労働省や関係団体とも連携して改善基準告示の周知徹底を図るとともに、荷主を含めたサプライチェーン(供給網)全体の取引環境の適正化や生産性向上のための取り組みを推進することで、働き方改革の実現と安定的な輸送サービスの確保に努めたい」

(平野 淳)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月5日号より