国土交通省は、貨物軽自動車運送事業者の輸送安全確保と労働環境改善に向けた協議会を立ち上げ、30日に初会合を開く。電子商取引(EC)市場の拡大と宅配需要の急増を背景に車両台数が拡大する一方、事業用軽貨物車(黒ナンバー)が原因による死亡・重傷事故件数が2021年までの5年間でほぼ倍増した。24年度からは、時間外労働の上限規制などのルールが適用される。宅配を業務委託された個人事業主が多いことを踏まえ、実効性ある安全対策や法令順守を促す対策などを検討する。
協議会の名称は「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」で、出席者は大手ECサイト運営会社、元請運送事業者、業界団体の関係者らだ。
貨物軽自動車運送事業は、運輸支局に届け出ることで車両1台からでも事業を始めることができ、近年は個人事業主を中心に新規参入が増加中だ。事業用軽貨物車の保有台数も21年末で約30万台と、16年末から約7万台増えた。
一方、事業用軽貨物車が原因による死亡・重傷事故件数も17年から増えている。21年は365件で、16年(199件)比83%増だった。事業用軽貨物車以外の事業用貨物車の件数は減少傾向にあるだけに、対策が求められる。
貨物軽自動車運送事業者を取り巻く環境も大きく変わる。24年度から、時間外労働の上限規制や、昨年12月に改正した改善基準告示に基づく拘束時間帯などのルールがすべてのドライバーに適用されるが、国交省は「貨物軽自動車運送事業者の理解が十分に進んでいない恐れがあると考えている」と懸念する。
現在、貨物軽自動車運送事業者と国交省の接点は経営届出時だけだ。堀内丈太郎自動車局長は協議会を通じ「問題認識の共有や意見交換を行い、貨物軽自動車運送事業の輸送安全確保やドライバーの労働条件改善などにつなげていきたい」と語った。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月30日号より