政府は、約2兆円を投じる「グリーンイノベーション(GI)基金」の支援対象に、自動車などに用いる金属部品の脱炭素化事業を新たに追加する。「炭素国境調整措置」の導入を検討している欧州連合(EU)などへの輸出を念頭に、製造工程での効率的な熱利用プロセスの開発を支援する。二酸化炭素(CO2)の排出量が最も多い製造工程の排出削減を進め、サプライチェーン(供給網)全体の脱炭素化を後押しする。
EUは2026年から、域内への輸入品に対して炭素排出量に基づいた輸入課金を求める炭素国境調整措置の導入を予定している。アルミや鉄鋼などが対象品となるため、自動車メーカーやサプライヤーには供給網全体での排出削減が求められることになる。
企業の製造分野における脱炭素技術の開発を支援するため、自動車などに用いられる金属部品の製造における熱プロセスの脱炭素化技術の開発を、GI基金事業の追加プロジェクトとすることを決めた。22年度2次補正予算で追加確保した3千億円を事業費として活用する。事業の詳細は今後、詰める。
また、海外主要国が環境やエネルギー分野への投資を増やしている実態を踏まえ「物流分野における輸送効率化に係る技術の開発や実証」や「CO2等の有効活用に向けた統合的な実証を液化して輸送する技術や、CCSに係る技術の開発」などの新プロジェクトの組成も検討する。
GI基金は「50年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)実現」の政府目標の達成につながる製品や技術の社会実装を目指し、30年までの約10年間、政府が継続的な支援を行っていくための原資だ。総額で2兆円の予算が充てられ、足元では19プロジェクトが進む。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月7日号より