国土交通省は、センサーやデータなどを使ってタイヤ(車輪)の脱落を防ぐ車載装置の開発に向けたロードマップ(工程表)の策定を自動車業界に求める。技術開発や実用化の度合いを探りつつ、開発した装置の装着を促す制度改正も検討する。タイヤの脱落事故は重大事故につながりやすい。国交省はこれまでも確実な点検や交換作業を呼びかけてきたが、車輪の脱落事故が後を絶たないことから、ハードとソフトの両面で対策を打つ。
国交省に設けた「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」が昨年末に公表した中間取りまとめの中で、中・長期的に実施すべき対策の一つとして「ナットの緩みの予兆検知などに関する車両対策」を提言した。これを踏まえ、国交省は自動車メーカー各社などに開発ロードマップの策定を要請する。
国交省は、これまでもタイヤ脱落事故を防ぐよう関連業界に求めてきた。神奈川県で大型トラクター(けん引車)の左前輪が外れ、歩道を歩いていた母子3人が死傷する事故が起きた2002年1月には、トラック運送や整備業界などに注意喚起を通達。04年秋には適切な点検・交換体制を改めて求めるとともに、普通トラック(積載量4㌧級以上)の車輪を、JIS(日本工業規格)方式から、1輪当たりのホイールボルト本数が多いISO(国際標準化機構)方式に切り替えるよう自動車各社に促した。
それでも車輪の脱落事故は後を絶たない。国交省が把握している分だけで、事故の発生件数は11年度の11件から増加傾向にあり、21年度は123件の報告があった。
ナットの緩みを事前に検出する対策は、これまでも日本自動車工業会(豊田章男会長)などが有用性を検討してきた。ナットの締め付け時にスペーサー型のセンサーを挟んで緩みを検出する手法や、車輪の回転速度差や振動などから緩みを検出する手法などもすでにある。住友ゴム工業は昨年4月、独自技術「センシングコア」の説明会で、車輪脱落予兆機能を備えることなどを発表した。24年からの販売を予定しており、自動車メーカーにも売り込んでいる。
国交省としては、関係団体や自動車メーカーと連携して点検などの啓発や指導を強化する一方、ナットの緩みを検知して警告を促す車載装置の開発と普及にも取り組み、車輪の脱落事故を防ぎたい考えだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月9日号より