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自動車業界トピックス

国交省、「自動車アセスメント」などの効果を検証

自賠責「賦課金」引き上げ受けて透明性や納得性を担保

国土交通省は、「自動車事故対策事業」の効果検証体制を構築する。関連法の改正で同事業の原資となる自動車損害賠償責任保険(および共済)の「賦課金」を引き上げることになったため、同事業の透明性や納得性を担保するのが狙いだ。まずは個別事業の目標と目標達成に必要な施策に関する計画を4月にもまとめ、公表する。

「自動車事故対策事業」として行われている自動車アセスメント

自動車事故対策事業は、衝突テストなどの結果を公表することで安全装備の充実を自動車メーカーに促す「自動車アセスメント」と、交通事故で重度の後遺障害を負った人や家族への支援の2本柱で構成する。どちらも自賠責保険の積立金が原資で、税金に頼らない世界でも珍しい制度だ。

ただ、1994年度から2年にわたり、赤字国債の発行を回避しようと政府が約1兆円を積立金から流用し、返済が一向に進まないため、同事業の存続が危ぶまれる事態になっていた。このため昨年度に自動車損害賠償保障法(自賠法)と特別会計に関する法律が改正され、これまで「当分の間の実施」とされていた同事業を恒久的に実施できるよう制度が変わった。ただし、原資は保険加入者から徴収する賦課金を値上げする形で賄う。

改正法では、被害者支援と事故防止に関する個別事業の目標や施策を定める「被害者保護増進等計画」の策定が国交省に義務づけられた。また、国会審議の過程で、施策決定過程の〝見える化〟と客観的視点で効果検証を毎年、実施することなどの付帯決議も盛り込まれた。

このため国交省は、交通事故の被害者団体やユーザー団体、学識者らで構成する「被害者保護増進等事業に関する検討会」(仮称)を3月に設け、国交省がまとめる被害者保護増進等計画を審議・決定する準備を進める。また、効果検証のため「被害者保護増進等事業に関するワーキンググループ(WG)」(仮称)も年央に立ち上げる。

今後は、同WGで前年度の効果検証を行い、同検討会が最終的な効果検証を公開で実施し、毎年1月に金融庁の「自動車損害賠償責任保険審議会(自賠審)」に報告する枠組みとなる。

国交省としては、こうした枠組みをもとに自動車事故対策事業に関し、自動車ユーザーの理解を得たい考えだ。ただ、約1兆円の流用額のうち6千億円近くがまだ返済されておらず、自動車ユーザーの負担を増やして〝借金〟を肩代わりすることへの批判も根強い。流用分の確実な返済に道筋をつけることも課題と言えそうだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月21日号より