国土交通省は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)用急速充電器を公道に設置し、運用するためのガイドライン案をまとめた。現行法でも設置を禁じてはいないが前例がなく、自治体などの道路管理者や警察が及び腰のため設置が進んでいない。国交省はまず、道路管理者向けの手引きとして道路法に基づくガイドラインを整備し、公道設置を促すことにした。今年度内に正式決定し、道路管理者などに周知する。
ガイドライン案では、充電スペースの標準的な構造・設置場所を大きく2つに区分した。①車道から歩道側にくぼませたスペースを設けて充電器を設置する「ベイ型」②パーキング・メーターなどの場所に充電器を併設する「ストレート型」だ。どちらも駐車枠を路面に設けることや、充電器の設置において周囲を走行する車両や歩行者などの安全確保を図るため、事故防止対策などを求める。
設置プロセスもガイドライン案で明示する。民間事業者などが公道上に充電器を設置する場合は、道路管理者に「道路占用許可」を申請し、地元警察署も交えた審査・協議を経て許可を得る。充電器設置の希望事業者が複数あった場合、道路管理者は入札をで事業者を選定することができる。
充電器を設置するための道路工事などの費用は、原則として充電器の設置許可を得た事業者などが負担する。点検など維持管理・運用も占用者が実施する。
ガイドライン案では、公道に設置する充電器を「一定の公共性を有するもの」と定義し、複数メーカーの車両が充電できるものが望ましいとした。占用期間は「5年以内の範囲で定める」とするが、道路管理者などと協議して更新もできる。占用期間が満了した場合は、原則として占用者は充電器などをすべて撤去し、原状回復する必要がある。
3月8日までパブリックコメント(意見募集)を行った後に正式決定する。
急速充電器の公道設置は、神奈川県横浜市が2021年6月から実証的に取り組むほか、東京都もパーキング・メーターのある都道で計画している。政府は30年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラ15万基を国内に整えることを目標とする。国交省が道路管理者向けの手引きをまとめることで、使い勝手の良い公道設置が広がることが期待される。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月27日号より