【バンコク=藤原稔里】タイ投資委員会(BOI)のソンクリン・プロイミー副長官は、タイ・バンコク市内で8日までに日刊自動車新聞などのインタビューに応じ、経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む140カ国で合意した、多国籍企業への法人税の最低課税15%について「BOI内で議論を始めた。3月中にも政府の関係機関などと調整し、何らかの結論を出す」と語った。
法人税の最低課税については、2021年に国際税制改革の取り組みで、タイを含む約140カ国が合意した。際限のない減税競争を避ける狙いで、23年2月にはOECDが最低法人税の導入について、各国政府に最終ガイダンスを示した。
BOIでは、23~27年の5年間を対象とした「5カ年投資促進戦略」を打ち出し、日系企業を含む海外企業の誘致に取り組んでいる。産業や企業活動に応じて、法人税の免税や減税などを行うインセンティブを最高ランクの「A1+」「A1」「A2」「A3」「A4」「B」の6グループに分けた。法人税の免除期間は、A1+が10~13年間、A1が8年間(上限額なし)、A2が8年間(免税上限は土地代や運転資金を除く投資資本)、A3が5年間、A4が3年間などだ。
自動車などタイが誘致のターゲットとする産業にインセンティブを付与することで投資を促しており、成果も出ている。近年では非製造業の誘致数も増えている。プロイミー副長官は「(法人税15%の)問題は難しい。現在、具体的に話せることはないが、企業の声を聞いて、企業にメリットのある形で妥結したい」と語った。
BOIはまた、1月からの新たな奨励策に燃料電池車(FCV)や燃料電池システム部品の製造を加えた。プロイミー副長官は「グローバル化の流れや(日系自動車メーカーなどの生産拠点を持つ)タイの強み、社会への貢献度などを含めてFCVへの拡大にいきついた」と説明した。タイでは、トヨタ自動車が地元大手財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループと水素関連事業で協業を始めている。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月9日号より