中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議(会長=大村秀章愛知県知事)は27日、2050年に中部圏内で水素を年間200万㌧、アンモニアを年間600万㌧利用する目標を掲げた。自動車産業が集積する中部圏で水素やアンモニアのサプライチェーン(供給網)を構築し、次世代エネルギーによる脱炭素化を加速させる。同会議によると官民が一体となって水素・アンモニア需要の数量目標を打ち出すのは全国で初めて。
中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議は、トヨタ自動車や中部電力ら20社でつくる「中部圏水素利用協議会(寺師茂樹会長)」と行政、経済団体で構成する。同協議会が22年1月に大規模な水素の社会実装に関する提言書を大村知事に提出し、推進会議の立ち上げにつながった。
今回策定した「中部圏水素・アンモニアサプライチェーンビジョン」では、中間目標として30年に水素で年間23万㌧、アンモニアで年間150万㌧の需要目標を定めた。水素は20年代後半から自動車や工場など向けに利用をを本格化し、30年代に海外から水素を輸入するため名古屋港周辺での拠点整備などを進め、大規模需要が見込まれる発電所などの利用も開始する。アンモニアはJERAの石炭火力発電所・碧南火力発電所で23年度から混焼実証を開始し、海外からの大規模調達も進める。
水素利用はすでに燃料電池車(FCV)で実用化されており、今後は発電向けの需要拡大が期待される。中部圏以外では、川崎市でも大規模水素利用の検討が進んでいる。アンモニアは保存や輸送が容易で「水素キャリア」としても有望視されており、温暖化ガスをほとんど排出しない発電技術の開発も進む。同協議会では国内初のアンモニアサプライチェーン構築も目指す。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月28日号より