日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は、横断歩行者と車両の衝突事故を減らすための啓発プログラムをまとめた。危険予測力を低下させる感情を理解してコントロールする手法を学ぶ動画やワークシートを専門家と制作した。今後、関係官庁や業界団体などの啓発活動に活用してもらう。ドライバー、歩行者双方に具体的な行動改善を促し、交通事故死者を減らす。
交通事故総合分析センターによると、歩行者の死亡事故の約7割は道路の横断中に発生している。このうち27%は、「単路の直線」、21%は信号交差点、18%は「無信号交差点」で発生した(2018年~20年実績)。
動画はこうした事故実態を踏まえ、事故が発生しやすい直線単路、交差点右折時、交差点直信時、無信号交差点という4つのケースで「イライラ」や「驕(おご)り」といったドライバーや歩行者の感情が事故を誘発する事例を紹介する。教育プログラムでは、動画を視聴してもらった上で、受講者に感情コントロール手法を紹介する。「安全は、ワタシが、つくる」をコンセプトに、交通心理学を専門とする東北工業大学の太田博雄名誉教授の監修で制作した。
日本自動車連盟(JAF、坂口正芳会長)が昨年10月にまとめた調査結果では、信号機のない横断
歩道の一時停止率は全国平均で39.8%だった。徐々に改善傾向にあるものの、依然として約6割の車両が漫然と横断歩道を走り抜けているのが実態だ。
一方で動画では、歩行者側がドライバー側に横断の意思を明確に伝えたり、無理な横断をしないようにしたりする重要性も指摘している。自工会としては、コンテンツの活用を通じてドライバー、歩行者双方に意識や行動の改善を具体的に促し、交通事故の抑制を図る。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月1日号より