経済産業省は4日、企業の人権尊重の取り組みを促す実務資料を公表した。「人権方針の策定・公表」などについて事例を交えながら解説するなどの内容だ。特に中堅・中小企業に活用してもらいたい考え。米欧が人権尊重に関する法整備を進めていることもあり、日本企業の対策を促して国際競争力の維持につなげる。
「責任あるサプライチェーン(供給網)等における人権尊重のための実務参照資料」を公表した。2022年9月にまとめた「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を補完する内容だ。「人権方針の策定・公表」と、強制労働など人権リスクを特定して対応したり、予防策をつくる「人権デュー・ディリジエンス(人権DD)」の最初のステップとなる「人権への負の影響(人権侵害リスク)の特定・評価」について、検討すべきポイントや業務フローを詳述した。
具体的には、人権方針に記載する項目例やその解説、サプライチェーン上のどこに高い人権侵害リスクがあるかを洗い出すステップの解説や参考資料などを掲載する。参考資料では、事業分野別の人権課題について記載している。自動車を含む「一般製造業」の人権に関する主なリスクでは、最終製造拠点またはサプライチェーンの双方における「児童労働」や「低賃金、長時間労働、劣悪な健康及び安全基準を含む労働環境」など5項目を挙げている。
国際機関が公表している各種レポートなどをもとに産品別の人権課題も紹介しており、コバルトや鉄など21鉱物を「児童労働が指摘されている産品の例」として示す。
ガイドラインの対象は、規模や業種などによらずすべての企業だ。人権方針の策定、人権DDの実施、救済の実施(救済メカニズムの構築)の取り組みを求めている。経産省は今年1月に「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォースに係る協力覚書」にも署名している。
西村康稔経産相は同日、「国際的な取り組みを進めながら企業の予見可能性を高め、人権尊重の取り組みを進めていきたい」と語った。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月5日号より