整備受託などを手掛けるナルネットコミュニケーションズ(鈴木隆志社長、愛知県春日井市)は、同社が管理する約7万台の業務用リース車両について、2020~22年度の補修部品と工賃を合算した整備費用の変動を分析した。これによると、19年度と比べて20年度が4.1%増、21年度が3.9%増、22年度が5.0%増と上昇傾向にあることが分かった。維持費の高さから車の保有を敬遠するユーザーも出ている中、メンテナンスに関わるコストが高まり続ければ、自動車の流通全体で痛手になりそうだ。
整備費用の上昇は、補修部品の価格高騰が影響を及ぼしている。同社調査では21年度の主要な補修部品の価格が19年度比で、エンジンオイルが5.2%、オイルフィルターが3.0%、バッテリーが8.0%、夏タイヤが12.3%、冬タイヤが6.6%、エンジン部品が0.7%と軒並み上昇した。これにより、21年度の車検費用も同7.1%に増大する結果になった。
この傾向が22年度はさらに加速する。21年度比で夏タイヤが7.2%、冬タイヤが9.5%、ホイールが23.6%、バッテリーは5.5%増だった。原材料やエネルギー、物流などのコスト上昇が影響したとみられ、同社はこの中でも「比較的高価な部品の上昇が著しい」と分析する。特に、国内のタイヤ大手などは23年も値上げの動きを崩していないほか、不安定な国際情勢も続いており、補修部品の価格上昇は、まだ継続しそうだ。
車両の使用年数が長期化していることも整備費のコスト増の要因となっている。コロナ禍以降に、半導体や部品の供給不足が顕著になったことに加え、一部の自動車メーカーによる不正もあり、新車の供給不足が生じた。代替が難しくなっていることで、ナルネットの管理車両の平均使用年数は18年が4
7.64カ月だったのに対し、22年は50.06カ月まで伸びた。自家用車に比べ、同社が取り扱う事業用車両は稼働率が高く、使用年数が長くなればなるほど、不具合や部品の消耗が発生しやすくなる。平均使用年数の伸びが、整備需要の拡大を後押ししたとみられる。
点検や車検などの分解整備だけではなく、交通事故時などで損傷した車両を修理する車体整備でも、塗装材料などの値上げが続いている。国内の塗料メーカー大手は21年から3年連続で価格改定を行っており、溶剤系塗料で1回当たり約10~20%値上げしている。車体整備事業者は「ロシアのウクライナへの軍事戦略の状況次第で、まだ値上げが続くだろう」と懸念を示す。このままの状況が続けば、さらなる値上げに踏み切らざるを得ないメーカーが出る可能性もある。引き続き、注視していく必要がありそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)5月26日号より