新経済連盟(新経連、代表理事=三木谷浩史・楽天グループ会長兼社長)は「カーボンニュートラルビジョン」をこのほど発表し、自動車産業を重点投資分野としてより明確に位置づけるべきと提言した。パワートレインの決め手が見えない中で、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)、ハイブリット車(HV)のすべてについて「全力で取り組んでいくべき」とした。
新経連カーボンニュートラルワーキンググループ(座長=吉田浩一郎クラウドワークス社長)で副座長を務める城口洋平エネチェンジ社長が会見した=写真。
政府が2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」では、22の産業別分野があげられている。自動車産業は運輸部門の一つとして扱われているが、城口副座長は「日本の経済や雇用の屋台骨だということを考えると位置づけがあいまい。極めて重要な分野だ」と語った。普段は英ロンドンに住む城口副座長は欧州の情勢について「EV一辺倒なのは北欧や英国などクルマを造っていない国。独、仏、伊など自動車産業が強い国は、ある程度慎重論もある。欧州中心のEVシフトは一定程度ポリティカルイシュー(政治的案件)の面があることを理解しないといけない」とも語った。
城口副座長はまた、民間の資金調達の環境整備も重要だと訴えた。城口氏が経営するエネチェンジは、上場企業でEV充電器設置事業も手がける。事業資金の一部は政府補助金も活用できるが、融資を申し込んだところ「すべてのメガバンクに断られた」という。「いま設置しても5年間は赤字。そこからなんとか利益が出るかなという状況だ」。結局、政府系金融機関から借り入れたという。
岸田首相は22年5月、今後10年間で官民で150兆円超のGX投資を実現すると表明した。政府で「GX経済移行債」を創設し、10年間で20兆円規模の先行投資を行うことにしている。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)5月26日号より