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自動車業界トピックス

日車協連、価格適正化へ取り組み急ぐ 材料の原価と請求額が広がる

設備投資や人材確保に不安も

塗料価格は値上げが続いている

日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)が材料代の請求の適正化に力を入れるのは、実際の原価と請求額の乖離(かいり)が広がっているためだ。本来は原価に利益を乗せた請求額を提示するのが理想だが、逆に原価を下回るケースも珍しくないという。適正な利益を維持できなければ設備投資や人材確保に手が回らなくなり、事業継続に黄信号が灯る。日車協連としては、物価高騰や賃上げ要請の流れも踏まえ、会員が適正な料金を請求できる環境を整える。

修理見積もりでは塗料や副資材の塗装材料代を「指数×指数対応単価(レバーレート)×材料費割合」で算出するケースが多い。材料費割合は塗料の種類などで異なるものの、およそ10%台後半~20%台前半だ。日車協連が昨年12月にまとめた実態調査によると、事業者が実際に請求している材料費割合の平均は「16~21%」が36.2%で最も高く、次いで「22~27%」(28.5%)、「12~15%」(13.8%)、「28~33%」(11.3%)、「34%以上」(3.8%)と続く。

こうした状況の中で、保険協定時に塗装材料代が認められているか尋ねたところ「おおむね認められている」「認められる」の回答が76.8%を占めた。一見すると大きな問題はなさそうだが、日車協連調査研究委員会の泰楽秀一委員長は「(従来通りかつ最も使用率が高い)10%台の割合が認められるのは当然」と冷静に受け止める一方で、「22年4月の塗料メーカーの調査で、材料代の足元の仕入れ価格と請求実績の金額の差は大きい」と指摘する。

日車協連が参考にする塗料メーカーの検証では、15~18%の材料費割合で、実績との金額差は2千~7千円だった。実績から割合を逆算すれば、現状では少なくとも20%台後半~30%台後半が必要となる。

塗料価格は塗料メーカーから塗料販売店への卸売りベースで、10年以降に4、5回の値上げがあった。特にコロナ禍以降は2桁台の値上げが定着し、2023年も年央以降に物流コストの上昇などで値上げが予定されている。材料費割合の見直しができなければ、利益の圧迫は避けられない。

ただ、責任の一端は事業者側にもある。材料代の原価計算手法を尋ねたところ「計算していない」「感覚」が合わせて過半(53.8%)を占め、材料代の仕入れに対する見積り計上額上の利益でも「0%(計算していない)」との回答が過半(52.9%)だった。

昨今の物価高騰を踏まえ、保険協定時に従来の材料費割合よりも高い数字が認められているケースも増えつつある。必ずしもすべての板金塗装工場が苦境にあるとは言い切れない一方で、調査結果は原価計算をせず、どんぶり勘定で交渉するケースが未だに多いことを裏付ける。日車協連ではこうした慣行の是正も含め、請求適正化の取り組みを進めていく。

(村上 貴規)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月2日号より