国による電気自動車(EV)用の普通充電器補助金の一部が、3月末の申請受け付け開始から約2カ月で締め切られ、充電器の販売を手がける企業から予備費を活用するよう求める声が出ている。一部では、過去の太陽光発電事業のように権利保持を優先するような申請も見られるという。経済産業省は「予備分の扱いについては、ほかの充電設備への申請の状況を踏まえた上で決定したい」(自動車課)としている。
国は「クリーンエネルギー自動車(CEV)の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」として、2023年度当初予算と22年度補正予算分を合わせ約300億円を確保。申請実務を担う次世代自動車振興センター(NeV、堀洋一代表理事)は3月末から申請受け付けを始めた。
補助金は「充電インフラ」(約175億円)、「V2H充放電設備」(約50億円)、「水素充てんインフラ」(約75億円)に分かれる。充電インフラはさらに①高速道路や商業施設向けの急速充電器(約90億円)②マンションや駐車場向け普通充電器(約30億円)③商業施設や宿泊施設向けの普通充電器(約25億円)が用意され、さらに約30億円の予備費も用意した。
このうち、V2H充放電設備向けの補助は5月22日、充電インフラの③は6月11日に受け付けが締め切られた。いずれも予算上限に達したためだ。
充電器設置事業を手がけるエネチェンジ(城口洋平社長、東京都中央区)は12日、③について「予備分の予算を使って申請受け付けを再開するべき」とする意見書を経産省に出した。
同社が関係者にヒアリングしたところでは、補助金を確保するために一部の事業者が粗雑な書類で申請を急いだという。現行の手続きでは、早く申請すれば事実上、補助金分が確保される。申請書類に不備があったり、必要な書類が抜け落ちていたりしていても、何度もやりとりして直していくことが認められている。また、個々の駐車場について、明らかに過剰と思われる台数の充電器の申請も目立つという。補助金目当てで、一部の事業者が大量に設置しようとしているようだという。以前は、駐車場台数のうち、充電器設置数を一定割合に抑えるなどの規定があったが、今はなくなった。
こうした点を踏まえ、エネチェンジは、海外のように充電器の設置後に審査して補助金を交付したり、一定基準を設け、過剰な設置台数分の申請を防いだりすることも経産省に要望した。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月16日号より