事故時の「保険修理」をめぐる取引の適正化に向け、日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)は20日、約30年ぶりに損害保険会社との団体交渉(団体協約)に乗り出す方針を固めた。まずは修理費の算出に使う「指数対応単価」を交渉対象とする。長期的には塗料などの材料費や工数なども交渉対象にしたい考え。今後は実効性のある交渉スキームを損保各社と構築できるかが焦点となる。
団体交渉をめぐっては、公正取引委員会の警告を踏まえ、損保各社で組織する日本損害保険協会が1994年に見合わせを申し合わせた。ただ、車体整備工場は数が多いために毎年の個別交渉は事実上、形骸化している。また、損保側が単価改定の主な根拠とする消費者物価指数(CPI)はデフレ下で下落が続き、単価は99年度の引き上げを最後に据え置きが続いていた。日車協連側は、企業物価指数などをベースに協議するよう求めている。
日車協連は、中小企業の組織化を後押しする「中小企業等協同組合法」に基づき、団体交渉を申し入れる。まずは指数対応単価について、事業規模などに応じて複数のモデル単価を協議する意向だ。組合員の個別交渉は引き続き推奨する。モデル単価の活用法なども今後詰める。交渉が軌道に乗れば、塗料や副資材などの材料費や、損保各社が出資する「自研センター」が決める指数なども交渉の対象にしたい意向だ。
昨年から物価が高騰する中、損保会社と車体整備事業者らの取引に関する国会質疑が3月に行われて以降、車体整備業界では、保険修理費用の値上げが通るかどうか関心が高まっている。損保各社は4月に指数対応単価を一斉に引き上げたが、業界側は取引の適正化を継続的に協議していきたい考えだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月21日号より