電気自動車(EV)に注目が集まる陰でハイブリッド車(HV)の販売が伸びている。調査会社のマークラインズによると、2022年度の世界主要市場(日本、西欧、中国、米国、アジア)のHV販売(マイルドHV除く)は約360万台と、前年度と比べて1割以上、増加した。今のEVは価格や性能などから購入層が限られる。世界的な燃料高も背景に、中産階級の需要はより現実的で身近なHVに向かっているようだ。
EV市場をけん引する欧州や中国でもHVは売れている。西欧17カ国における22年度のHV販売は約78万3千台(前年度比15.3%)だった。欧州メーカーが得意とするマイルドHVは約154万台(同17.9%増)とさらに伸び率が高い。EV販売は約161万8千台(同24.7%増)だが、マイルドHVを合わせたHV販売はEVを4割ほど上回る。
中国は22年度のEV販売が初めて500万台を突破し、EV比率は約2割に達した。今年度は3割まで増加する見通しだが、22年度のHV販売も約71万5千万台(同19.8%増)に達し、同2.2倍の約170万8千台に増加したプラグインハイブリッド車(PHV)とともに販売は好調だ。中国の場合、急速に増加するEV販売は一部の都市部に集中し、充電インフラの整備が遅れている地方での普及ペースは鈍い。BYDや浙江吉利(ジーリー)などは、新興EV勢を突き放そうとPHV開発にも力を入れ始めている。
HVの成長率が高いのがアジア地域(インドや東南アジアなど主要11カ国)だ。22年度は約30万2千台(同33.0%増)だった。タイやインドネシア、インドではEVの普及推進策も打ち出しているものの、充電インフラや所得水準の制約もあり、EV比率は1.9%にとど
まる。HV比率も2.9%と決して高いとは言えないが、トヨタ自動車がHVの増産を検討するなど成長余地は大きい。
もっとも、増加を続けていたHV販売が22年度に減少に転じ、初めてEV販売を下回った米国のような例もある。ただ同国の場合、バイデン政権が打ち出したインフレ抑制法(IRA)や米環境保護庁(EPA)が発表した27年からの新排ガス規制などでEVの普及機運が一気に高まっているところでもあり、EVの伸びが今後も一本調子で続く保証はない。
一部の国やメーカーはEVシフトを急ぐ。イノベーション(革新)も進む。ただ、EVシフトは産業政策やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)対応の側面が色濃い。補助金や規制に頼らず中産階級の購買行動を変えるには何より経済合理性がモノを言う。20年代半ばに登場する全固体電池も「量産車にまで広がるには30年代以降」(自動車メーカー)というのが業界の見立てだ。HVやPHVの販売は今後も安定的に伸びていきそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月29日号より