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自動車業界トピックス

電動キックボード、「免許不要」解禁 改正道路交通法が施行 新たなモビリティ社会へ一歩

事故や駐車場など課題山積

 電動キックボードの新たなルールを定めた改正道路交通法が1日施行され、規制緩和によって16歳以上であれば、国が認めた電動キックボードを運転免許不要で公道や歩道で使えるようになる。一般的には海外と比べて安全に関わる規制の緩和に慎重な日本だが、新しいモビリティ社会に向けて大きな一歩を踏み出す。ただ、課題は少なくない。欧州ではコロナ禍で普及した電動キックボードの相次ぐ事故で罰則や規制を強化する動きがあるほか、実際に普及し始めると二輪車と同様、駐輪場不足などの課題も浮上するとみられる。モビリティの定着には官民で事故防止対策などの取り組みが求められる。

道交法の改正で「特定小型原動機付自転車(特定原付)」の区分ができる。車体サイズ(長さ1.9㍍以下、幅0.6㍍以下)、最高時速(20㌔㍍以下、歩道走行時6㌔㍍以下)などとする構造基準や保安基準を満たす車両であれば免許なしで公道を走行できる。ヘルメットの着用も任意だ。

30日時点で国土交通省が保安基準の適合性を確認した車両は、長谷川工業、ストリーモ、スワロー、ループの4社の9型式。三輪タイプを採用するストリーモ「ストリーモ」や航続距離が60㌔㍍と長い長谷川工業「ヤディア」など独自性のある製品を各社が展開する。一般販売するのはシェアリングサービスとして提供するループを除く3社が一般販売し、最も安い価格のスワロー「ファルコン」の場合、約14万円で販売する。

電動アシスト自転車よりも小回りが利き、デザインもスタイリッシュな電動キックボードは今後の普及が見込まれる一方、安全性には課題がある。警察庁によると、2020~22年までの3年間に電動キックボード関連の交通事故は74件。22年9月には電動キックボードを運転している男性の転倒事故も発生した。フランスでは事故やマナーの問題から8月末で電動キックボードのシェアリングサービスを禁止し、個人所有に関する規制も厳格化した。日本では警察庁やメーカーが安全講習などの対策を進めるものの、自動車教習所で数十時間をかけて学ぶ交通ルールを免許の非保有者に理解してもらうことは簡単ではない。

駐輪場も課題だ。駐輪場における電動キックボードの扱いは管理事業者の判断によるものの、国交省によると基本的には通常の「原動機付自転車」と同等の扱いとしている。ただ、そもそも原付を含む二輪車の駐輪場の数が足りていないのが現状だ。手軽さが売りの電動キックボードだけに、駐輪場探しがストレスになればユーザーにとっての魅力が薄れる。

課題は少なくないとはいえ、新しいモビリティとして期待される電動キックボード。安全性と利便性のバランスを見極めながら普及の道を探っていくことになりそうだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月1日号より