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自動車業界トピックス

国の充電器補助金、また打ち切り 参入企業増加で「補助金ありき」の事業モデルも

補助制度の費用対効果に工夫を

商業施設や駐車場向けの普通充電器の補助金は早くも底を付いた

国による普通充電器向けの補助金が例年にないペースで執行されている。商業施設や宿泊施設向けと、マンション・月極駐車場向けの補助事業は、ともに6月で申請受け付けがいったん打ち切られた。将来をにらみ、充電事業に参入する企業が増えたためだが、一部では「設置費用0円」をPRする〝補助金ありき〟の事業モデルも散見される。実需に基づいた充電網の最適配置を含め、補助制度の費用対効果を高める工夫が国には求められそうだ。

補助事業の実務を担う次世代自動車振興センター(NeV、堀洋一代表理事)が申請受け付けを打ち切ったのは、①マンションや駐車場向けの普通充電器②商業施設や宿泊施設向けの普通充電器―の導入補助事業だ。2022年度補正予算と23年度当初予算を合わせて約55億円を確保したが、6月末までに申請総額が予算額を超過した。これとは別の「V2H充放電設備・外部給電器の導入補助事業」も5月末で予算が底をついた。国は予備分として約30億円を用意しており「対応を検討している」(経済産業省自動車課)状況だ。

例年にないペースで予算が底をついた背景には、充電インフラ事業に参入する企業が急増していることがある。特に普通充電器は、急速充電器と比べてコストや設置面の〝参入障壁〟が低く、デジタルコンテンツなどを手がけるIT企業や、シンガポールで充電事業を手がける企業、スタートアップなど、多彩な顔ぶれがそろう。

日本でも、昨年に市場投入された軽EVがけん引役となり、EVへの関心が高まっている。大手インフラ事業者は「商機を感じ、今のうちにインフラ網を作っておこうと考えている企業が増えている」と解説する。

ただ、過去には補助金目当てで安易に参入する事業者が乱立し、是正を迫られた再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)のような事例もある。前出の大手インフラ事業者は「『設置費用0円』などの安さを売りに集客している事業者も多いが、設置後の事業モデルや廃棄時の説明などをどこまでしているのか不安が残る」とも指摘する。

国は運輸部門の脱炭素化に向け、来年度以降も充電インフラの補助事業を続ける方針だが、予備分の執行時も含め、不断の見直しが求められるところだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月5日号より