自動車保険金の不正請求を認めたビッグモーター(兼重宏行社長、東京都港区)について国会で質問し、同社に乗り込んだ国会議員がいる。日本維新の会の浅川義治衆議院議員(南関東ブロック比例区)で、同社から中古車を購入した人のトラブルを追及した。今、保険請求に関しても不正の詳細が次々に明らかになっている。浅川議員は秋の臨時国会において、消費者問題特別委員会か財務金融委員会で同社の問題を改めて質問していく意向だ。
浅川議員が質問したのは2022年11月15日の衆院消費者問題特別委。知人が「大手中古車販売業」の神奈川県内の店舗で、同年夏に中古車を購入した時のトラブルについて質問した。このときはビッグモーターという実名は使わなかった。「刑事事件になっているわけではない」などと考えた。
知人が買おうとした車は車高が低く見えたため、「サスペンションを変えているのではないか」と店員に聞いたところ、「ノーマルだ」と返答されたという。試乗時はよく分からなかったが、購入後に明らかに乗り心地が悪いと実感。知り合いの整備事業者が確認すると、いわゆる「走り屋」向けの仕様になっていた。このため、知人は購入したビッグモーターの店舗とやりとりしたが、らちが明かなかった。これを聞いた浅川議員が同年11月14日、同社の本社で取締役営業本部長のI氏と会った。
I氏からは①購入者は納得して購入したので問題ないと報告を受けている②トラブルは店で解決するルール③本社に消費者相談窓口やコンプライアンス担当の部署はない―、という趣旨の説明をされた。ただ、自社について「高給も見込めて(無理しがちになるため)社内体制も含めて改善の必要性を考えていた」というようなことも言っていた。さらに、「ほかにも問題を抱えている」とも話していたとしている。
浅川議員は「中古車販売ではこのように泣き寝入りする人も多いのでは」と、政府の見解をただした。河野太郎・内閣府特命担当相は「(業界で定めた)『公正競争規約』がある。誤解がないような商売をすることで業界の健全な発展につながる」などと答弁した。
別の衆院議員(日本維新の会)も23年5月に、同社の不正車検やトラブルについて質問した。河野担当相は「国土交通省と連携しながら(消費者が)泣き寝入りにならないような対応をしていきたい」と答えた。
浅川議員は、ビッグモーターのI氏と会うまでの苦労話も打ち明けた。同社のホームページには、本社の代表電話番号さえも載っていない。問い合わせ先が分からず、ある官庁に相談した。その官庁が同社にかけあった結果、I氏が窓口になることになった。I氏の携帯電話の番号を官庁から聞き、やっと訪問の約束が取れたという。また、面談の後に、I氏が社内に確認し浅川議員に連絡することになっていたが、電話はかかってこなかった。
浅川議員の知人にも話を聞いた。車庫証明は自分でとると言ったのに、「うち(ビッグモーター)のルールでそれはできない」と言われて約2万円の手数料を支払った。また、ナンバーの希望番号を要望していないのに、この分の代金約2万円も請求された。乗り心地の悪いサスペンションの交換もしてもらえず、「もういいや」という気分になった。まさに泣き寝入りだ。「大きな店でちゃんとした会社だと思ったのに」と、悔やむ。
浅川議員は「中古車といえども消費者にとっては大きな買い物。自動車保険金の不正請求の資料が監督官庁に出されたらそれは公文書になる。国政調査権を使って明らかにしていきたい」などと話している。
(小山田 研慈)
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月19日号より