ロシア向けの中古車輸出が曲がり角を迎えようとしている。同国のウクライナ侵攻に対する経済制裁の一環として、日本政府は新車・中古車を問わず、排気量1.9㍑超のガソリン車などの輸出を禁じる方針を固めた。一方で、ロシアは8月から通関時にかかる「リサイクル税」を大幅に引き上げる。新車の輸出は自動車各社がすでに自粛している。両国の措置により、日本からロシアに向かう中古車が半減するとの見方もある。
日本政府がロシアへの輸出を禁止するのは、1.9㍑超のガソリン車とディーゼル車、すべての電気自動車(EV)とハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)だ。月内にも閣議決定し、外国為替及び外国貿易法(外為法)などを改正した上で、来月にも施行する。
5月に広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明で、参加国はロシアに対する新たな経済措置を打ち出した。すでに米国はすべての乗用車のロシア向け輸出を禁止したほか、欧州連合(EU)も1.9㍑超の乗用車や電動車の輸出を禁じており、日本も欧米と足並みをそろえる。
政府は昨年4月から新車・中古車を問わず600万円超の輸出を禁じている。600万円以下の車両に関しては、禁止はされていないものの、完成車メーカーは輸出を自粛しており、自動車輸出は実質、中古車に限られていた。
一方、ロシア側でも輸入中古車を排除する動きが出始めた。ロシア当局は、輸入した車両に対して通関時にかけるリサイクル税を8月から引き上げる方針を示している。排気量2㍑以下の乗用車なら、約17万8千㍔(約27万円)のリサイクル税が30万㍔(約46万円)になる見込み。ウクライナ侵攻を受け、ロシア側としては、中古車の輸入を排除することで、外資から接収したり、格安で譲渡されたりした国内の組み立て工場の操業を軌道に乗せたいとの思惑があるとみられる。
日本にとってロシアは最大の中古車輸出先だ。2022年には約20万台(輸出全体の19%)を輸出した。輸出額ベースでは約2500億円(同26%)にのぼる。今回の禁輸措置では「(輸出額ベースで)1500億円ほどが対象になる」(経済産業省自動車課)見通し。
中古車輸出はもともと、仕向け地の環境規制や関税率に左右されやすく、輸出事業者はそのたびに新たな仕向け地を開拓するなどして凌(しの)いできた。今回も同じ流れとみることもできるが、足元では最大の仕向け地だっただけに影響は大きそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月20日号より