国土交通省がまとめた2022年度の自動車整備事業者に対する行政処分件数は、121件(前年度比2件減)とほぼ前年並みだったが、最も重い「指定取消」の件数が倍増した。全体の処分件数もコロナ禍で整備事業者への監査の頻度を控えた上での実績で、コロナ禍前と処分件数はほぼ変わっていない。不正車検など悪質な事例に加え、人手不足により一部の検査を省くなどの事例もいまだに少なくないとみられる。
指定取消は18件で、前年度から8件増加した。内訳はディーラーが8件、整備事業者などが10件だった。法令違反の内容を詳しくみると、四輪駆動車(4WD)などを対象としたスピードメーターの精度を検査せず保安基準適合証を交付した事例が目立つ。
指定整備業務を一定期間停止する「事業停止」は19件。長野県長野市の整備事業者では、長野運輸支局の立入検査(監査)を正当な理由なく拒否するなどして、22年8月に20日間、10月に35日間の事業停止をそれぞれ受けた。
「保安基準適合証などの交付停止」は53件。内訳はディーラーが30件、整備事業者が23件。ディーラー処分の半数以上は特定の1社によるものだ。「自動車検査員の解任命令」は24件で、人数にすると45人だった。過去10年間では、最も多い処分人数となった。
近年の指定工場の処分件数の推移を見ると、19年度から22年度はコロナ禍の影
響を受け、地方運輸局などによる監査を控えざるをえなかった。このため「増減要因を分析することは難しい」(国交省)という。ただ、21年度から2年連続して行政処分件数がほぼ同数で推移した背景の一つには、自動車メーカーと系列ディーラーによる自主点検で不正車検が相次ぎ発覚したことが挙げられる。
国交省は、21年9月に自動車メーカーとインポーター(輸入事業者)に対して、系列ディーラーの法令順守徹底を要請。10月には日本自動車整備振興会連合会(日整連)にも指定整備事業者の適切な事業運営の指導に努めるよう通知した。
悪質な不正行為が相次げば社会的な信頼が失墜し、指定整備制度の根幹を揺るがしかねない。また、コンプライアンス(法令順守)に関する世間の目が厳しくなるなか、不正行為が発覚した事業者側も経営的なダメージは大きい。国交省は引き続き、整備事業者への指導や監査を徹底していく考えだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月21日号より