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自動車業界トピックス

「ライドシェア」導入議論が再燃、賛否両論の行方に注目 タクシー業界は猛反発

一般のドライバーが自家用車を使って乗客を有償送迎する「ライドシェア」の導入をめぐる議論が再燃した。規制改革担当相を兼務する河野太郎デジタル相は、タクシー不足の解決に、ライドシェアを含む対策を関係省庁と議論していく考えを26日までに示した。タクシー業界や、同業界を所管する国土交通省は反対の姿勢だ。与野党内でも賛否両論があり、議論の行方が注目される。

ライドシェアの日本導入の賛否は、以前から議論されてきた

河野デジタル相は22日の閣議後会見で、ドライバー不足で公共交通サービスの提供が困難な地域を中心に、タクシー関連の規制緩和を行う必要性を示すとともに、ライドシェア解禁の検討も「積極的に議論をやっていきたい」と語った。

議論再燃の呼び水となったのが、菅義偉前首相による「ライドシェアを含む観光地や地域の交通手段のあり方については、結論を先送りにするべきではない状況になってきている」との発言だ。小泉進次郎前環境相も「『タクシーかライドシェアか』という二項の対立ではなく、選べる社会を作らなければいけない」などと呼応した。

ライドシェアは過去にも注目され、海外の事例を引き合いに「日本も導入を検討すべき」との意見が出た。しかし、全国ハイヤー・タクシー連合会が猛反発。歴代の国土交通相は「極めて慎重な検討が必要」と繰り返してきた。斉藤鉄夫国交相も今回「インバウンドの急回復による旅客輸送需要への重要性と危機意識は菅前首相と同じ見解」と断りつつも、「ライドシェアは、運行管理や車両整備について責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、安全の確保の観点から問題がある」と語った。松野博一官房長官も記者会見で、斉藤国交相と同様の見解を示している。

国土交通省は、以前からタクシー不足を緩和しようと試行錯誤を続けてきた。警察庁に働きかけた結果、昨年5月の改正道路交通法に基づき、第二種免許の取得要件は、特例で「普通免許取得後1年以上、19歳以上」に緩和された。国交省はまた、在留資格「特定技能」の対象に「自動車運送業」を追加する方向で検討に入っている。

ただ、河野デジタル担当相は二種免許の取得要件緩和について「高校を卒業してタクシードライバーになりたくても、卒業後1年間は第二種免許を取得できない。その間に他の仕事を見つけて(他業種に)就職する事例もあると聞いている」と語った。免許取得可能年齢の引き下げや、試験の多言語化の必要性にも触れた。

全国ハイヤー・タクシー連合会は「安全・安心に関する問題点が多いライドシェア解禁は、日本における輸送サービスの根幹を揺るがす」と、反対姿勢を鮮明にする。ただ、同連合会によると、2023年3月末のタクシードライバー数は約23万人。コロナ禍前(19年3月末)の29万1516人と比べて2割減った。観光地はもちろん、地方都市などで予約が受けられないなどの事例が相次いでいる。

河野デジタル担当相は、ライドシェアの是非も含めた議論を「デジタル行財政改革会議」で議論する方針だ。タクシー関連の現行制度と規制緩和に関する問題点などを「具体的にリストアップして国交省や警察庁に対応を考えていただくことになろうかと思う」とも語った。

ライドシェアは新たな働き方を提供する一方、導入各国で既存の運輸業界との軋轢(あつれき)や乗客トラブルが報じられる。「高品質なタクシーサービスがある日本には無用」との意見も根強い。ただ、物流と同じように少子高齢化で担い手が減っていくことは必至だ。議論の行方が注目される。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)9月27日号より