岸田文雄首相の所信表明演説に対する衆参両院での各党代表質問が24~26日に行われた。自動車に関する質疑では、野党側がガソリン(揮発油)税に関する「トリガー条項」の凍結解除を迫ったほか、国民民主党の玉木雄一郎代表は「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入補助金」の対象を国内メーカーの国内生産車に限定するよう提案した。ライドシェアについては与野党でも賛否が分かれ、岸田首相は早急に方向性を出すと表明した。
25日の衆院本会議の代表質問で、国民民主の玉木代表はCEV補助金と充電・充填インフラなどの導入補助金を補正予算で予算を積み増すよう求める一方で、米国の「インフレ抑制法(IRA)」を念頭に「中国の車に支援を税金を使ってどんどんやっていいのか、よく考えるべきだ」と岸田首相に迫った。岸田首相は、脱炭素に不可欠な電動車の普及に向け、消費者の需要や企業の投資意欲を継続的に喚起することが重要との認識を示したうえで、「WTO(世界貿易機関)ルール上の課題もあると承知しているが、自動車貿易の維持とGX(グリーントランスフォーメーション)実現の2つのバランスを取る観点から、引き続き適切な補助制度を検討していく」と応じた。
野党側からはガソリン税のあり方についての質問も相次いだ。岸田首相は、トリガー条項の凍結解除についてはその考えがないことを改めて表明し「経済対策で燃料油激変緩和措置を来年春まで継続する」と答えた。揮発油税などの「当分の間税率」と「二重課税」の廃止も「考えていない」とした。
立憲民主党の泉健太代表は「走行距離課税の導入は行わないということでよいかどうか、改めて確認したい」と質問した。岸田首相は「政府として具体的に検討しているわけではない」とした上で「中長期的な自動車関係諸税のあり方については、与党の税制改正大綱で『引き続き検討課題』とされているものと承知している。政府としては、与党での議論を踏まえ、対応を検討してまいりたい」と、明言を避けた。
岸田首相が所信表明演説で、ライドシェアの課題に取り組むことを表明したことに対しては、自民党の世耕弘成参院議長と日本維新の会の馬場信幸代表が、解禁に向けて検討を推進するよう促した。
25日の参院本会議で、世耕幹事長はライドシェアについて「いつまでも議論するのではなく、期限を切ったスピード感を持って関係者の調整を行って、腹をくくって実現しなければならない」と迫った。これに対し、岸田首相は「地域交通の担い手不足、移動の足の不足といった深刻な社会課題に対応しつつライドシェアの課題に取り組み、早急に方向性を出してまいりたい」と答弁した。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)10月28日号より