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自動車業界トピックス

〈岐路に立つ自動車税制〉自治体トップらが自動車税制の抜本見直し訴え

「国内投資引き出すために」

2024年度の税制改正に向け、自動車関連産業が多く立地する自治体のトップらが政府・与党に対する要望活動を始めた。保有を含めた自動車ユーザーの税負担の軽減や簡素化に加え、自動車産業の投資を引き出す戦略的な税制度の議論を求める。一定の市場規模を伴う自動車産業の競争力を高めることが、雇用や税収の安定確保、地域経済の成長などにつながると政府・与党に訴える。

(写真左から)JAFの柴田年輝交通環境部長、石井経産政務官、愛知県の大村知事

自動車メーカーの工場などが集積する自治体の8知事・2市長は連名で、24年度税制改正における「自動車諸税の抜本的な見直しを求める緊急声明」を公表。愛知県の大村秀章知事が代表して8日から関係省庁などを訪問して意見交換と要望活動を始めた。

要望の柱は2つ。一つは「国際水準と比べて依然として重い保有時を含めた税負担の一段の軽減と簡素化の検討」だ。次いで「自動車産業が今後も積極的に国内投資を決断・実行できるように、速やかに課題解決を進めること」を求める。税制にとどまらず、産業・雇用政策、エネルギー、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)政策も含め、戦略的に議論する重要性を強調した。

人口減少や少子高齢化などによる国内自動車市場の縮小に加え、脱炭素や各国による投資の囲い込みなど、自動車産業を取り巻く世界情勢や競争環境は厳しさを増す。こうした中、自動車関連企業は将来の投資判断を迫られており、緊急声明で「この2、3年で脱炭素実現を含むさまざまな課題解決を進めない限り、自動車関連企業は海外投資を加速せざるを得ず、国内産業の空洞化、競争力の低下につながる恐れがある」と強い懸念を示した。

現行の税体系を今後も維持し続けた場合、中長期的にはシェアリングサービス拡大に伴う車体課税の税収減や、電気自動車(EV)の普及に伴う燃料課税の税収減などが見込まれる。ただ、自動車関係諸税を見直さず、減収分の穴埋めとして「出力課税」「走行距離課税」などの税負担を自動車ユーザーに求めることは「国内市場のさらなる縮小と自動車産業の競争力低下となり、結果として大きな税収減につながる」と反対した。

一方で議論に際しては、地方の財政に影響を及ぼさず、減収額に見合った安定的な代替財源を制度的に確保することも求めた。

大村知事は8日、鈴木淳司総務相に会い、要請書を手渡した。大村知事は「自動車メーカー各社はこの2、3年で国内投資か、海外投資かの決断を迫られている。自動車産業が将来ともに日本の主力産業であり続けてもらうためには、今こそ政策メッセージを発するべきではないかと申し上げた」と語った。

9日には、石井拓経済産業政務官と新藤義孝経済再生担当相に要請書を手渡した。石井経済産業政務官は「税制だけでなく、新たな減税措置の検討や中堅・中小サプライヤーに対する電動化への支援、電源の脱炭素化など総合的な取り組みを進める」と応じた。

自治体による要望活動には日本自動車連盟(JAF、坂口正芳会長)の担当者も同行し、自動車ユーザーの声をもとに自動車税制の抜本見直しを政府・与党に求めた。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月10日号より