油価に応じガソリン(揮発油)税を機動的に変更する「トリガー条項」の凍結解除をめぐる協議が、政府・与党と国民民主党との間で再び始まる。過去にも同様の協議が行われたが結論は先送りされた。今回も政府・与党内に慎重論が根強く、解除へのハードルは高い。
岸田文雄首相は22日の衆議院予算委員会で、トリガー条項について「凍結解除も含めて与党と国民民主党で検討したい」と、国民民主の玉木雄一郎代表に答えた。その後、岸田首相は、自民党の萩生田光一政務調査会長に国民民主と協議を進めるよう指示した。24日には、萩生田政調会長と国民民主の大塚耕一政調会長が国会内で会談し、トリガー条項の凍結解除も含め自公と国民民主の3党で協議を進めることで合意した。
トリガー条項は、レギュラーガソリン価格の全国平均が1㍑=160円を3カ月連続で超えた場合、53.8円の揮発油税のうち25.1円分の上乗せ課税を止める仕組み。政府が石油元売り各社に支給している補助金の対象4油種のうち、重油と灯油はトリガー条項の対象外だ。
財務当局は早速、けん制の動きを見せている。鈴木俊一財務相は24日に行われた閣議後会見で、トリガー条項の凍結解除について「発動に際して国と地方で1.5兆円もの巨額の財源が必要になるなどの課題がある」との認識を示した。「代替財源の確保」は、財政当局が減税などを議論する際に必ず持ち出す論法だ。昨春に行った3党協議でも、財源確保が困難として結論が先送りされた。
今回、再び急浮上したトリガー条項の凍結解除をめぐる3党協議だが、岸田首相は先月24~26日の衆参両院での各党代表質問において、トリガー条項の凍結解除について、その考えがないことを改めて表明していた。揮発油税など「当分の間税率」と「二重課税」の廃止も「考えていない」と強調した。わずか1カ月後の方針転換は、低迷する内閣支持率の再浮上につなげたい思惑もあるとみられる。財政当局のハードルは高いが、物価や燃料高が続くなか、国民に身近な燃料課税の議論がこれまで以上に注目を集めることは間違いなさそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月25日号より