全国各地の整備専門学校で行っている外国人留学生の専用学科の入試で、応募を途中で打ち切る動きが相次いでいる。2024年度に入学を希望する留学生が多く、早々に定員に達したためだ。自動車メーカーの直営校のほか、独立系の整備学校でも同様の傾向になっている。応募者の人数が予想を大きく上回る事態を受け、急きょ留学生学科の定員拡大を決めた整備学校も出ている。各校はコロナ禍で実施された入国制限などの影響により、留学生の入学者低迷に直面していた。ここにきてのV字回復ぶりに、整備学校の関係者は活気ある学校運営の実現に期待感を高めている。
好調ぶりが目立つ整備学校の一つが、日産京都自動車大学校(川嶋則生校長、京都府久御山町)だ。同校は23年度、9月から24年3月にかけて、全15回の入試を予定していた。しかし、留学生の専用学科への応募が多数となったため、12月1日に実施する9回目の入試を最後に、募集を終了することを決めた。
同校では22年度、定員40人に対して55人の留学生が入学した。しかし、同校への進学前に通常1、2年程度通う日本語学校への入学がコロナ禍で停滞したあおりを受け、23年度は12人にとどまっていた。同校では、この落ち込みを一時的なものと判断。24年度の入学者を対象に、定員を2倍の80人に増やすことを決めた。この読みが当たった格好だが、それでもカバーしきれないほど留学生が集まった形となっている。
他校も同様の動きをみせている。トヨタ名古屋自動車大学校(永田透校長、愛知県清須市)は24年3月にかけて全6回の入試を予定していたが、23年11月18日に実施した3回目の入試を最後に、募集を終了した。静岡工科自動車大学校(古澤浩一校長、静岡市葵区)も、24年度から留学生学科の定員を前年比1・5倍の60人に増やしたが、すでに応募が定員に達しており、募集を締め切らざるを得なかったようだ。
想定を上回る留学生の入学希望者への対応策を打つ整備学校も出ている。3年制の留学生学科の募集を打ち切ったトヨタ名古屋自大は、一定の日本語能力を持つ留学生について、2年間で国家二級自動車整備士の資格取得を目指す「自動車整備科」や国家一級課程の「高度自動車科」など、日本人学生も通う学科で受け入れる方針を示している。
トヨタ神戸自動車大学校(鈴木二郎校長、神戸市西区)は今秋に、留学生学科の定員を当初予定の80人から110人に増やした。実際の入試が始まる秋に、定員を変更するのは珍しい。同校の留学生の専用学科は100人を超える定員となり、西日本の整備学校で最大級になる。23年度の留学生学科の入学者数は28人だったが、24年度は大幅な上積みが期待できそうだ。
各校ではこれまで、多くの留学生を呼び込むため、学習環境や支援体制などの充実に取り組んできた。さらに、留学生が来日し、まず通う日本語学校にも、指定校推薦の枠を拡大するなどしてきた。こうした地道な取り組みも功を奏しているとみられる。
ただ、今後の動きについて、慎重な見方も出ている。コロナ禍の影響で留学生の入国者がばらつき、24年春の入学希望者の山が大きくなった可能性があるためだ。そもそも足元の留学生の増加に対応したくても、「定員増は校舎設備の関係で難しい」という学校関係者が居るのも事実だ。
また、今、日本への留学希望者が多い東南アジア諸国では、将来的な経済成長が見込まれる。経済力が高まれば、現地の学生の志向が変わる可能性もある。日産・自動車大学校の本廣好枝学長は「整備学校に多くの学生を送ってきた国々から、将来も多くの留学生が来てくれるか、少し不安もある」と打ち明ける。
これからも安定的に留学生を受け入れていくためには、これまでとは違ったアプローチで日本の整備学校に通う魅力を訴えていく必要があり、各校の知恵と工夫が求められそうだ。
(諸岡 俊彦)※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月29日号より