「エコカー減税」と「環境性能割」の基準が2024年1月から段階的に厳しくなる。価格帯やブランドによって多少の温度差はあるが、新車販売への影響は軽微と見る向きが現場では大勢だ。ただ、ガソリン価格の高騰などを契機に自動車や燃料の税負担に厳しい目を向ける自動車ユーザーが増え、岸田文雄首相はガソリン(揮発油)税に関する「トリガー条項」の再協議を迫られた。政府・与党は2025年末を念頭に自動車税制の見直し議論を進める考えだが「税収減の穴埋めありき」という魂胆が国民に見透かされると、想定以上の反発を受ける可能性もある。
政府は、23年度の税制改正でエコカー減税、環境性能割、「グリーン化特例」ともに3年間、延長することを決めた。通常は2年ごとに見直すが、足元のコロナ禍による納車遅れや物価高を踏まえて「異例の措置」とした。とくにエコカー減税と環境性能割は今年
12月末まで現行基準を据え置き、その後、1年ごとに燃費基準を切り上げていくことにした。グリーン化特例は3年間、減税条件を変えない。
販売会社は新車納期の長期化などを踏まえ、商談客には優遇税制の変更などを説明済みで「予定していた納車が仮に24年1月以降にずれたとしても、多くのお客さまは『仕方がないね』と納得している。特段の混乱はない」(販社営業スタッフ)という。「われわれとお客さまの関心はCEV(クリーンエネルギー自動車)導入促進補助金の行方だ」(同)との意見もある。
ただ、27年度以降の自動車税制のあり方をめぐっては予断を許さない。財政当局は、燃費の向上や電気自動車(EV)の普及をにらみ、先細りする燃料税収を何とか埋め合わせようと「出力課税」「走行距離課税」などを水面下で検討中だ。日本自動車連盟(JAF)や自動車業界としては、「公正・公平・簡素」に逆行する現在の複雑な税体系を見直し、自動車関連の税負担を国際レベルにまで下げることが自動車産業の雇用や国際競争力の維持に欠かせないとの立場だが、財政当局や与党税制調査会幹部のハードルは高い。
それでも反転攻勢の芽がないわけではない。一例が揮発油税のトリガー条項だ。民主党政権時に導入されたが、自民党と財政当局は東日本大震災からの復興名目で発動を凍結してしまった。しかし、岸田首相は補正予算案の成立と引き換えに、公明党、国民民主党との3党協議を受け入れた。あくまで協議に過ぎないが、この間に国民の関心は高まりつつある。過去の消費増税が歴代政権の鬼門だったように、国民に身近な自動車に関する税制度も、小手先の〝改革〟を重ねていると、やがて国民から手ひどいしっぺ返しを受けかねない。
(税制取材班)
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月1日号より