自動車事故被害者団体などでつくる「自動車損害賠償保障制度を考える会」(座長=福田弥夫・日本大学危機管理学部教授)は4日、斉藤鉄夫国土交通相と会い、自動車損害賠償責任(自賠責)保険料の賦課金などから一般会計に繰り入れられている約5900億円の返済について、繰戻額の増額や早期の全額返済に向けた取り組みの強化などを求めた。斉藤国交相は「今後、さらに要望や施策が充実するように、そして(介護者の家族らが課題に挙げる)『保護者なき後』の心配にできるだけ応えられるようにわれわれも頑張っていく」と応じた。
自動車ユーザーが支払う保険料の運用益の一部は交通事故による重度後遺障害者の介護に充てられている。しかし、この財源に目をつけた財務省は1994年度から2年にわたり、約1兆円の運用益を一般会計に流用した。当初は2000年度までに返すはずだったが、未だに約5900億円が未返済のままだ。
国交省は、一般会計から自動車安全特別会計への繰り戻しについて、23年度は当初予算で60億円(前年度は54億円)を確保しているが、このペースでいくと完済までに約100年かかる計算だ。
22年の交通事故死者数は6年連続で過去最少を更新して2610人となったが、介護を必要とする重度後遺障碍者数は横ばいの状況が続く。事故被害者を介護する家族らの高齢化などを背景とした「保護者なき後」への備えを含めた事故被害者救済の充実や、自動車事故防止対策のいっそうの充実が課題だ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月5日号より