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自動車業界トピックス

〈岐路に立つ自動車税制〉税制改正大綱、車体課税は2023年度方針を持ち越し

「トリガー条項」記載見送り

自民、公明の両党は2024年度の与党税制改正大綱を決めた。所得税や住民税の減税に加え、賃上げや国内投資を促す税制を拡充したが、議論の最中に自民党の「裏金」問題が直撃し、防衛財源のための増税開始時期の決定を見送った。自民党の宮沢洋一税制調査会長は「所得減税を入れれば、間違いなく圧倒的に減税規模が大きい」と説明した。自動車関連では、電気自動車(EV)などの生産や販売量に応じて法人税を減らす「戦略分野国内生産促進税制」が創設される。一方で、ガソリン(揮発油)税に関する「トリガー条項」の凍結解除に関する記載は見送られた。車体課税については「検討事項」として23年度大綱の記述がそっくり踏襲された。

2024年度税制改正大綱をまとめ、撮影に応じる自民党の宮沢洋一税調会長(右)と公明党の西田実仁税調会長(14日)

戦略分野国内生産促進税制は①EV(蓄電池)②半導体③再エネなどで製造した「グリーンスチール」④植物などからつくる「グリーンケミカル」⑤再生航空燃料(SAF)の5分野が対象だ。それぞれ、事業計画の認定時から10年にわたって法人税を減税する。税額控除額は電動車で1台当たり20万円(軽自動車を除くEVと燃料電池車は40万円)、グリーンスチールは1㌧2万円、SAFは1㍑30円などとし、生産や販売量を掛け合わせて最終的な控除額を決める。控除上限は法人税額の4割(半導体は2割)までとし、控除限度を超過した分は4年間(半導体は3年間)繰り越せる。

賃上げについては、前年度から給与総額を7%以上増やした企業に増額分の25%を法人税から控除できる仕組みを設ける。女性活躍や、子育て支援に積極的な企業には控除額を上乗せする。また、優遇基準を満たしたものの、赤字で納税しない中小企業などを想定し、5年間を限度に繰り越し控除措置も設ける。

車体課税は、もともと「次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める」(大綱)との扱いだったため、今回は前年度の大綱方針をそのまま持ち越した。一方、トリガー条項の扱いについては政府・与党が慎重姿勢を崩さず、大綱への記載は見送られた。国民民主党が凍結解除を求め、自民、公明を含む3党が11月に協議を始めていた。大綱原案には、トリガー条項について「引き続き3党で協議を行う」との表現が入っていたが、最終的に削除された。

今回の税制改正議論は「増税イメージ」を打ち消したい岸田文雄首相の意向に自民税調が配慮したうえ、裏金問題が大々的に報じられた渦中でもあり、世論の反発を恐れ減税色が濃くなった。宮沢税調会長は「増税はそれなりに政権の力が必要だ」と語った。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月16日号より