ドイツ政府は、電気自動車(EV)の購入補助制度を18日までに打ち切った。当初は2024年末まで継続する予定だったが、独憲法裁判所が新型コロナ対策で使用しなかった予算の転用を憲法違反と判断した。台当たり数十万円の補助金が打ち切られることでEV普及ペースが減速する可能性がある。
ドイツは、EVをはじめとする電動車の普及を促すために16年から補助金の支給を始めた。23年1月からはプラグインハイブリッド車(PHV)を対象から外し、4万ユーロ(約620万円)未満のEVに4500ユーロ(約70万円)、4万~6万5千ユーロ(約1010万円)のEVに3千ユーロ(約47万円)の補助金を支給してきた。24年は支給対象を4万5千ユーロ(約698万円)未満のEVに限り、補助額を縮小しつつも制度自体は続ける予定だった。
独政府は、コロナ対策で使用しなかった600億ユーロ(約9.3兆円)の対策費をEV補助金を含む気候変動対策に充ててきた。しかし、11月に憲法裁判所がこの支出を違憲と判断した。これを受けて「インセンティブによる支援をできるだけ早く終了することが決まった」(独経済・輸出管理局)という。
19年(1~12月)に2%未満だったドイツのEV比率は、政府支援も追い風に22年には17.7%に上昇した。ただ、法人や自治体が補助金の支給対象から外れた23年9月の販売は前年同月実績を下回り、直近の11月も同22.5%減になるなど、補助金の縮小で足元のEV販売は減速ぎみだ。さらに個人向けの補助金が打ち切られることで、EVの普及ペースが鈍化する可能性がありそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月19日号より