UDトラックス開発部門の岸伸彦バイスプレジデントとデザイン部の岸本良介シニアデザイナーは10月18日、上智大学で「グローバル環境における商品開発について」をテーマに講演した。2007年にボルボ・グループ傘下となったUDトラックス。岸バイスプレジデントは「いろいろな課題を克服するには多様な人材の意見が重要だ」と語った。
岸バイスプレジデントはもともと日本ボルボに入社した。「ボルボはすごく良い車を作る会社だと知り、英語を話せないけど運良く入社できた。入って苦労もしたが、得るものは多かった」と振り返った。今やUDトラックスは多国籍企業で、開発部門もさまざまな国の人がいる。岸バイスプレジデントは「『自分で思いつかないことは、自分で気づかない』という。いろいろな人の意見を聞くことと、ローカルなものとグローバルで共通なものを組み合わせることで新しい発想を生み出すことができる」と話した。
商用車について「トラックは『なんだか大きいもの』と思われがちだが、大型車『クオン』では(クライアントの要望に応じるため)約2500もの種類がある」と、乗用車との特性の違いなどを説明した。
ユーザーに応じた車両の作り分けについては①顧客の期待②営業からの期待③工場の期待④社会的要求―の4視点で開発を進めるという。
①は、燃費の良さや耐久性、安全性の高い車両であること②は整備化しやすく、他社製品に負けない商品力がある「売りやすい車」であること③は組み立てやすい車④は排気ガス規制や騒音規制などへの対応だ。岸バイスプレジデントは「顧客が何を求めているか、というところから開発は始まる」と話した。
岸本シニアデザイナーは「どんなものが欲しいか、ユーザーに聞いても内容は漠然としていてあやふやだ。でも、それぞれ潜在的なニーズを持っているので、それをいかに引き出して商品に落とし込むかが重要だ」と語った。
講演では、実際に業務に用いるペンタブレットを用い、上智大学のスクールカラーであるボルドーワイン(えんじ色)と大学の公式キャラクター「ソフィアンくん」を車体に施した「上智大専用トラック」をデザインする様子を披露し、一部の学生に塗装などを体験してもらった。車体が完成に近づくにつれ、学生から歓声が上がり、岸本シニアデザイナーは「部活の遠征などにどうですか?」とすかさず売り込んでいた。
岸本シニアデザイナーはまた「(車を描く)クリエイティブな仕事は実際(の仕事量)の半分以下だ。ほとんどは完成したトラックを売ってもらうために拠点や展示会などで説明したり、実際にどんな使われ方をしているか調査に行くことが多い」と普段の仕事内容を説明した。
また、ユーザーニーズを生かした商品デザイン体験も実施した。クライアント役の学生が、教室のモニターにランダムで映し出される単語を組み合わせてつくった「働き者のモルモット」という言葉をもとに、デザイナー役の学生がペンタブレットを用いてデザインした。
岸バイスプレジデントは「仕事をするときに色々な考え方を取り入れることが大事だ。出席してくれている皆さんは国際系(の学部)が多いと聞いたので、ぜひ(能力を)発揮してほしい」とエールを送った。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月12日号より