日野自動車の脇村誠最高技術責任者(CTO)は11月7日、電気通信大学で講演し、「2024年問題? カーボンニュートラル? 技術で挑む商用車の可能性」をテーマに、自身の経歴や商用車市場を取り巻く環境などについて語った。
脇村CTOは大学卒業後、スズキに二輪のエンジニアとして入社。その後、ヤマハ発動機に転職した。21年には日野自動車に技術担当副COO(最高執行責任者)として入社した異例の経歴を持つ。二輪車メーカーでは、燃料噴射システムの開発などに携わった。商用車メーカーでの仕事の醍醐味について「社会システムの一部を自分たちがつくれるワクワク感がある。一方で、(社会インフラの一部なので)社会に大きな影響を与えるという緊張感や責任感もある」と語った。
主な学生とのやりとりは以下のとおり。
―二輪車メーカーを経験して日野に入社した。社風の違いは
「企業文化はそれぞれ違う。会社トップのポリシーで変わる。日野でもひしひしと感じている。今、日野の中で組織改革を進められているのも、僕がこんな格好でフラフラ歩いて好きなことをこうやってお話しできるのも、日野の社長の考え方だ。社長の方向性と僕がやりたいことが合っている。これはすごく大事。何万人いる会社でも、たった1人のトップの考え方でガラッと変わる」
―開発の道に進みたいが、大学院に行った方が良いか
「ドクター(博士号)を持っていること自体が価値ではない。(ドクターを)取るまでに、どんなプロセスを歩んだかが大事だ。思考の展開の仕方、論理的に物事を整理し、自分で課題を見つけて解決できるかのトレーニングができていれば、ドクターであろうがマスター(修士号)であろうがあまり関係はない。学部卒でもすごい人はいる。どうやってPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すか、どうやって論理展開を回すかなどのトレーニングを意識してほしい」
―電気自動車(EV)開発のポイントは
「電動車もEVも、基本はコンピューターやバッテリー、モーターがあって、これをどう制御するかだ。完成車メーカーとして、制御を通じてどう車を作っていくかだ。バッテリーやモーターは専業メーカーにやはり一日の長がある。完成車メーカーとしては、良いものを買い、それをどう制御するか。ここが勝負のポイントになる」
―組織改革の成果は
「もともとの日野の組織課題はセクショナリズムが強かったところだ。今、会社では『みんなで良い車を作ろうよ』としきりに言っている。1台の車を作るためには、各部署が横でつながらないとできない。部署ごとの役割はあるけれど『自分の仕事はここまで』ではなく、両隣の人を見ながら、自分の役割を理解し『ここがうまくできていないと次の人が困る』という考え方に変えている」
―趣味と仕事のバランスをどう取っているか
「睡眠時間を削ることだ(笑)。そのために体力をつける…というのは極論で、脳の切り替えを意識している。会社から離れると、仕事のことは考えないようにしている。時間は有限なのでメリハリをつけることが大事だ」
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月14日号より