政府は、水素関連産業に15年間で3兆円規模を投じる方針を示した。脱炭素燃料としても注目される水素は、燃料電池車(FCV)や製鉄の生産工程などで活用が見込まれる。一方、実用化に向けては低コスト化や安定供給が課題だ。政府としてはまず、水素と既存原料との価格差を補てんする。国として、長期間の投資の目安を示すことで民間の研究開発や量産投資を促していく考えだ。
政府は、国内における水素などの導入目標として、2030年に現在の1.5倍となる300万㌧、40年に同6倍の1200万㌧を目標に掲げている。民間の投資を促す施策として、既存原料との価格差に着目した支援策や、大規模サプライチェーン(供給網)構築のための拠点整備支援、水素ステーション(ST)の設置や水電解装置の生産能力拡大などを支援していく。
この中で、天然ガスや石油など既存原料と水素との価格差を補てんする事業に15年間で3兆円規模を投資する。今年度から政府が発行するGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を活用する。支援対象としては、水素をエネルギー源とするFCVや、脱炭素原料として用いる「グリーンスチール」の生産などが想定される。また、炭素集約度が一定値以下の「クリーン水素」の供給拡大なども支援していく方針だ。
大規模水素サプライチェーン構築に向けた拠点整備支援の具体策もこれから詰める。一定量以上の水素を安定して供給できるようにする。
政府は、今後10年間で20兆円分のGX債の発行を予定する。今回はそのうち約13兆円分の支援策をまとめた。水電解装置の供給網構築支援などに10年間で1兆円規模を投じるほか、CCUS(CO2の回収・貯留)などへの製造プロセスの転換には10年間で1兆3千億円規模を充てる。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月20日号より