国土交通省は、今年も「自動車整備の仕事体験事業」を実施する。初開催した昨年は263人の学生が参加した。整備士の指導を受けながら仕事を体験した学生の満足度は高く、整備士を将来の進路として考えるようになった学生も少なからずいたようだ。国交省は、参加した学生や自動車整備事業者の意見をもとに事業内容を見直し、さらに多くの学生や整備事業場に参加してもらいたい考えだ。
仕事体験事業は、国交省が全国の自動車整備事業者と連携して「未来の整備士」の発掘に取り組む初の試み。学生が実際の職場で整備士と接して仕事内容を体験することで、整備士に対する興味や関心を高めてもらうのが狙いだ。
将来の進路を検討し始める高校生や専門学生との接点づくりは、整備士の志望者を増やすための一手となり得る。同事業は原則、企業のリクルート活動を目的としたものではないが、学生を受け入れる自動車整備事業者にとっては就職希望者を増やす有力な手段にもなる。
高校生、専門学生、大学生らが対象で、仕事体験は夏休みや土日を活用して3日間とし、7~9月、10~12月の2期に分けて実施した。
実施に先立ち、国交省は全国の工業高校や専門学校などに同事業を案内し、自動車整備事業者のアピールや独自に作成した仕事体験プログラムの内容などを紹介した専用ウェブサイトも設けて、学生からの応募を受け付けた。
参加生徒数と受入事業者数は、1期が158人・112事業場で、2期が105人・47事業場で、合計で263人・152事業場だった。
物流・自動車局自動車整備課によると、参加学生からは「自動車整備士の仕事について理解が深まった」「将来の進路として自動車整備士を考えるようになった」といった感想が多く寄せられた。中には「3日間では足りない」という声もあった。普通科の学生や女子学生も参加したという。
この事業について、斉藤鉄夫国交相は昨年12月5日の参議院国土交通委員会で「未来の自動車の確保につながるものと期待している。これらの取り組みを通して自動車整備士の確保、魅力向上に全力で取り組む」と語った。多田善隆・自動車整備課長は「協力していただいた整備事業者と学校の関係者には感謝を申し上げたい。参加した学生と整備事業者の声や要望を踏まえ、事業内容をより良いものに改善して来年度も継続していきたい」と話した。
初の取り組みだっただけに、学校や学生、自動車整備事業者に対する周知不足や、学生と受入事業者とのマッチングのあり方など課題もあった。国交省としては業界団体や自動車整備事業者などとともに改善策を検討し、仕事体験事業を一段と盛り上げていきたい考えだ。
(平野 淳)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)1月19日号より