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自動車業界トピックス

変革求められる整備業界 OBD・電子制御装置整備なお課題

損保も迫られる改革

2024年は、自動車整備業界にとって乗り越えなければいけない課題が多い1年になりそうだ。整備事業者の事業の柱である車検制度が変わる。また、電子制御装置整備の認証取得の経過措置の終了により、4月以降は対象となる作業は認証を得た工場で行わなければならなくなる。原材料価格の高騰などで設備機器の投資にも、従来以上にコストを要する。新車販売、自動車保険、リサイクルなども先行きが見通しにくい課題が生じており、整備以外の動向にも目が離せない。

24年の整備業界は乗り越えなければいけない課題が多い

整備事業者の大きな課題の一つが、10月に本格運用が始まる「OBD(車載式故障診断装置)検査」への対応だ。国土交通省などは現在行われている〝プレ運用〟で発生した不具合の原因の特定や課題の洗い出しを進めている。整備事業者による事業場IDの登録、OBD検査システムへの初回ログイン率は一定の水準に達する一方、検査で使用する「特定DTC照会アプリ」の初回使用率は3%(23年12月時点)にとどまる。

特定整備における電子制御装置整備の経過措置は、残り2カ月ほど。ただ、認証取得率は同11月の時点で55.7%と6割弱。残りの期間でこの割合がどこまで上昇するか見通せない。さらに、24年4月からは、電子制御装置整備の認証を持たない事業者が該当する整備の作業を行うと未認証行為になる。このため、各地でこうした行為を「通報する動きが著しく増えるのではないか」と懸念する声もある。

加えて、〝ビッグモーター問題〟によって、事故車の修理に対する消費者の目が厳しくなった。国土交通省は車体整備業界の信頼回復に向けて消費者保護と事業者の法令順守を進める具体策を発出する方針。整備業界のイメージアップを後押しする考えだ。

こうした中、将来の整備需要の母体となる新車販売が復調している。23年の軽自動車を含む新車販売台数は、前年比13.8%増の477万9086台と5年ぶりに増加した。特に、SUV人気がけん引しており、日本自動車販売協会連合会(金子直幹会長)によると、乗用車に占める割合が32.9%を3分の1近くに達した。輸入車は電気自動車(EV)の発売が相次ぎ、暦年の販売台数が初めて2万台を越えた。23年の中古車の登録・届け出台数も前年比2.1%増の643万4916台と、4年ぶりに前年超えした。こうした流れは24年も続くとみられるが、ダイハツ工業で拡大した認証不正の問題による新車の出荷停止が長引けば、市場の盛り上がりに水を差しかねない。

新車販売はコロナ禍の影響から脱却しつつある中、リサイクル事業者が求めている使用済み自動車の仕入れ環境は好転していない。新車の販売増に合わせ、下取り車や買い取り車も増えているとみられるが、中古車や輸出関連の需要も大きく、仕入れ競争が激化しているためだ。ただ、自動車リサイクル促進センター(JARC、細田衛士理事長)によると、23年8月以降は毎月、発生台数が前年実績を上回っている。しかし、コロナ禍前の水準には遠く、本格的な回復までにはまだ時間がかかりそうだ。

整備業界と関係が深い損害保険各社も、ビッグモーター問題を受けて長年の慣習を改めるなどの改革に迫られている。各社は有力な取引工場に、修理する顧客を紹介するなどしていた。大手損保では事故車両の修理の入庫先を、顧客が選べるシステムを相次いで開発するなど対策を急いでいる。24年もこのような取り組みが進む可能性が高い。

◆月刊「整備戦略」2024年2月号で特集「2024年を乗り越える」を掲載します。

 ※日刊自動車新聞2024年(令和6年)1月25日号より