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自動車業界トピックス

PHVの選択肢がじわり拡大 燃料高を追い風に販売増にも期待

「つなぎのパワートレイン」か「電欠しないEV」か

クラウンスポーツ

プラグインハイブリッド車(PHV)の品ぞろえが国内でじわりと増えている。先導役はトヨタ自動車だ。2012年の「プリウスPHV」を皮切りに国内7車種目となる「クラウンスポーツ」のPHVも23年末に発売した。プリウスPHVの発売当初はハイブリッド車(HV)との違いを顧客にうまく説明できず苦戦を強いられたが、車種が増えたことや、燃料高を追い風に販売増へ期待がかかる。

国内では、トヨタ以外では三菱自動車とマツダがPHVを扱う。輸入車勢もメルセデス・ベンツ、ボルボなど約30車種以上が日本で購入可能だ。HVより割高だが、航続距離などの不安から電気自動車(EV)の購入に踏み切れなかったり、日常的な短距離利用が主でPHVの特徴を存分に生かせると考える顧客が食指を動かしている。もっとも、乗用車(登録

PHVシステム

車と軽自動車の合計)に占めるPHVの割合(23年実績)は1.3%とEV(2.2%)を下回るが、伸びしろは大きいとも言える。

ただ、普及に向けては課題も残る。車両価格に直結する車載電池の容量をどう決めるかが代表例だろう。容量が小さければ車両価格はHVに近づくが、EV走行距離が短くなってしまう。逆に容量を増やすと充分なEV走行距離を確保できる半面、車両価格が上がり、充電時間も延びる。電池容量を選べるような仕様も一部メーカーで構想中だが、当面は各社とも頭を悩ませそうだ。

 急速充電口の設定もメーカーによって異なる。トヨタの場合、17年発売のプリウスPHVで急速充電口をオプション設定したが、20年発売の「RAV4PHV」、22年発売の「ハリアーPHV」以降は設定を見合わせた。EVに比べて急速充電の必要性が低いうえ、〝充電渋滞〟を招くのではないかとの懸念があったためだ。

クラウンスポーツPHVでは急速充電口の設定を復活させた。パワートレインカンパニーパワートレイン先行統括部の能川真一郎主査は「充電設備もだいぶ増えてきた」と理由を説明する。三菱自やマツダのPHVも急速充電に対応している。

富士経済によると、国内のPHV市場は、35年に22年比11.7倍の35万台になる見通し。世界では同2.4倍の650万台との予想だ。EVや燃料電池車(FCV)といったZEV(無公害車)へシフトするまでの〝つなぎのパワートレイン〟と捉える向きもあるが、トヨタは近い将来、PHVのEV走行距離を現在の90㌔㍍(クラウンPHV、WLTCモード)から200㌔㍍へとほぼ倍増させる考え。電欠する心配のないEVとして、思いのほか活躍する可能性もありそうだ。

(織部 泰)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月17日号より