東日本大震災から間もなく13年たつが、新年早々に能登半島地震が起きるなど、国内は今でも大規模な自然災害が頻発している。急な避難生活を余儀なくされ、車に滞在することを選ぶ人も少なくない。こうした場合に、災害用品としても使用できるカー用品を準備するユーザーも増えている。オートバックスセブンでは「生理現象への対応や、プライバシーを守る用品などが売れている」という。携帯電話の充電など、緊急時の電源確保に焦点を当てた新製品も目立つ。用品各社は万が一の備えを呼び掛けることで、より多くの人の命や健康を守っていきたい考えだ。
車載しておく防災用品として、根強い人気があるのが携帯トイレだ。災害が発生した場合、道路の復旧や救出作業の進ちょくによっては、車内で長時間過ごさざるを得ない恐れがある。防災用品を手掛けるケンユー(占部克明社長、広島県福山市)やセイワ(田邉貴幸社長、東京都江戸川区)が手掛ける製品では、省スペースでの使用や排泄物の後処理を容易にすることで車内でも使いやすくしている。ユーザーも手軽に使えて、臭いなどを気にしなくてよい点を製品選びのポイントとしているようだ。
また、車内で寝泊まりする場合、断熱やプライバシーの保護からサンシェードを用意しておくユーザーも居る。ガラス面を覆うことで、車内の急激な温度変化を防ぐとともに、車外からの視線も遮ることができる。カー用品店の店頭でも、災害時にサンシェードが役立つことをアピールする動きも目立っており、災害対策の関連用品として定番商品になっている。
ここ数年で需要が大きく伸びているのは、電源関連だ。発災後の情報収集や連絡手段には、スマートフォンが欠かせない。このため、スマホの充電にも使えるモバイルバッテリーを持つ人が増えている。カー用品では、バッテリー上がりを起こした車両につないで再始動できるジャンプスターターの機能を持たせた製品を選ぶユーザーも多い。最近のモデルではスマホ用の充電ソケットを備え、持ち運びできるサイズまで小型化したものも増えている。さらに、LEDライトを搭載するなど、災害対策としての機能を特徴としているものも売れ筋のようだ。
電動車に搭載している大容量の駆動用電池から電源を確保する市販用アイテムも出ている。セルスター工業(勝永直隆社長、神奈川県大和市)は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の電流監視コードリールを発売した。使用量をリアルタイムで計測、表示するため、安全かつ適切に管理しながら電気を取り出すことができるという。
能登半島地震では、感染症への不安や避難所生活の不便さから、車で過ごす被災者が少なくないという。ただ、身動きがとりにくい車内では、エコノミークラス症候群などの健康被害を引き起こす危険性も高まる。さまざま残るリスクの解決につながるような新たな用品を開発していくことも、業界各社には求められそうだ。
(後藤 弘毅)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月7日号より