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自動車業界トピックス

置き去り防止装置、装着義務の猶予は3月末まで

整備業界は繁忙期 間に合うか

メーカーや整備の現場は奮起しているが…

送迎バスの幼児置き去り防止装置で、装着義務化の猶予期間の終了が3月末に迫っている。こども家庭庁では、対象車両の5万4345台に「100%装着される」としている。ただ、同庁が2023年12月に公表した資料では同月末での装着見込みは全体の85.7%。あと約15%残すが、装置の取り付けを担当する整備事業者にとって、この3カ月間は車検対象も多い繁忙期と重なる。同装置のメーカーにも、いまだ新規の注文が寄せられているという。事実上の駆け込み需要が発生する中、一部の事業者からは「本当に間に合うのか」と心配する声が上がっている。

同装置を手掛けているメーカー各社や、取り付け作業を担う整備事業者では当初、猶予期間の終了を待たずに需要が落ち着くとみていた。置き去り事故への社会的関心が高く、装着が義務化された対象の車両台数にも限りがあるためだ。しかし、2月末時点での受注状況は、「23年末と同様に推移している」(加藤電機)など、需要が減っていない状況のメーカーが少なくない。

また、装置を取り付けている事業者によると、国が対象とした車両向けの作業依頼のピークは「23年7、8月だった」(セイビー)としている。これ以降、対象とされなかった施設の車両への取り付け依頼も増えている。これをこなしながら、残る対象車両への作業も進める必要があるため、現在も「ピーク時と同様の勢いがある」(同)としている。

こうなった要因としては、対象車両を持つ施設がニーズに合う装置の選定に手間取ったり、自治体で補助金支給の時期に差があり、早期の購入判断ができなかったところがあったとみられる。

現在、対象車の装着率がどのくらいかは、分からないのが実情だ。こども家庭庁では「前回の調査以降、装着率の調査は行っていない」という。期限までに装着が完了するとの根拠は、「自治体で進ちょくを管理しているが、現時点で装着が間に合わない事例があるなどの報告は受けていない」としている。また、前回調査では3月末の装着見込みが99.9%だったが、この対象車を持つ幼稚園での課題が「解決したという報告を文部科学省が自治体から受けている」ことから、100%になると判断しているようだ。

前回調査以降、装着が順調に進めば決して達成は難しくはないとみられる。しかし、ペースが狂えば、同装置の供給するメーカー各社や取り付ける整備事業者にしわ寄せが及ぶ。普段よりも多い車検入庫をこなしている整備現場では、場合によって、同装置の取り付けに割ける人員を確保することが難しくなる懸念もある。「ごく一部であるが、装着が間に合わないケースが出る可能性もあるのではないか」(整備事業者)という声も聞かれる。

最も大事なのは子どもの命を守ることだ。メーカーや整備の現場は奮起しているが、行政側も正しくすべての車両に装着されているのかチェックすることも必要になりそうだ。

(後藤 弘毅)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月8日号より