自動車整備士が、やりがいや働きやすさを感じられるような職場づくりのガイドラインを国土交通省がまとめた。人手不足を背景に整備士の待遇改善は進むが、全職種平均と比べると年間休日や所得でなお見劣りする。人的資本の重要性が増す中「労働条件」「待遇」など、ポイントごとに狙いや目指すべき方向性をまとめ、企業規模ごとに参考となる事例も盛り込んだ。国交省は関係団体などと連携し、自動車販売会社や整備工場にガイドラインを役立ててもらうよう働きかける。
経営層のほか、サービス部門や人事部門など、職場づくりを担う関係者向けにまとめた。現状の職場環境や課題を把握し、課題解決の具体的な目標と実行計画をつくる際の参考としてもらう。
やりがい、働きやすさに影響する要素を「働き方・労働条件」「人間関係・コミュニケーション」「人材開発」「待遇(働く価値)」の4つに整理し、取り組む事項を「基本」「発展」の2段階に分けて示した。例えば、働き方・労働条件では、勤務シフトの柔軟化や女性整備士の起用などを、待遇(働く価値)では各種手当のほか、アンケートなどで顧客の声を集め、整備士に社会貢献を実感できる機会を提供するなどの取り組みを例示した。
参考事例では、ホワイトボードを使った担当業務の明確化や、整備士の休暇予定を基にした入庫調整、業務効率化システムの導入といった取り組みと、その成果を紹介している。
官民の取り組みもあり、自動車整備業も過去10年で労働1時間当たりの所得額が増えるなど待遇改善が進む。ただ、人手不足に伴う待遇改善は他業種も同じで、不断の見直しが要る。人間関係・コミュニケーションは、選んだ仕事や職場を続けるかどうかを左右する重要な要素という。
自動車整備技術の高度化は今も進んでおり、事業継続には整備士を人的資本として捉え、その価値を最大限引き出す「魅力ある職場づくり」が最も重要で「整備事業者の中長期的な企業価値向上にもつながる」とガイドラインは指摘している。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月3日号より