国土交通省は「自動車検査員の働き方の実態調査」の結果をまとめた。自動車検査員は本来、「みなし公務員」として検査判定や指示に関し、勤務先の職位や就業規則を超える強い職務権限が与えられているが「そう思わない」「わからない」と答えた検査員が全体の3割いた。自動車保険金の不正請求を起こしたビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)では、自動車検査(車検)の違反も数多く見つかった。国交省は、検査員の責任と役割を就業規定などで明確化するよう整備業界に働きかけるなどし、あらためて制度の趣旨を徹底していく考えだ。
ビッグモーターで不正車検が相次いだことを踏まえ、昨年11月に調査の実施を決め、指定整備工場の経営者と検査員、合わせて約5200人にアンケート調査した。
検査員の職務権限(裁量権)について「ある」(そう思う/多少そう思う)と答えた経営者は約89%、自動車検査員は約71%だった。風通しの良い職場の雰囲気については「ある」と答えた経営者は約86%、自動車検査員は約59%だった。いずれも経営者より検査員の方が低く、検査員の責任や役割が「他の社員に十分に認識されていない」との声も寄せられた。
自動車検査員は、指定整備事業者に勤める民間企業の社員だが、国が行うべき車検を代行する立場上、自動車検査員服務規程(省令や通達)でみなし公務員に指定されている。国家資格分類の一つである「業務独占資格」にも該当し、検査についての判定と指示に関する権限は「社内における組織、職位および就業規則など、社内規定にかかわらず検査員が有するものとする」と規定されている。
国交省としては、検査員の自覚とともに「自動車検査員がみなし公務員である自身の立場を認識し、公正、厳格に検査を行える環境を事業者が整備することが重要」とし、①就業規定で自動車検査員の責任と役割を明確化すること②経営層と自動車検査員のコミュニケーションを促すこと③全社員を対象に、自動車検査員の役割を含む法令順守に関する教育・研修を実施すること―などを求める。
「民間車検場」とも言われる指定自動車整備事業所は、年間2千万件ほどある車検(継続検査)の8割弱を担う。指定整備制度の根幹を担うのは自動車検査員だ。安心・安全なクルマ社会の〝番人〟として、その役割は重い。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月6日号より