日刊自動車新聞社

モビナビ学生 モビナビ転職

新規会員登録は現在受付を休止しております

企業の採用ご担当者の方は「モビナビの求人掲載」

メニュー

自動車業界トピックス

三井住友海上、信頼回復はES向上で 一時金や定時退社

次々とユニークな制度

三井住友海上火災保険が社員向けのユニークな制度を次々に打ち出し、損害保険業界の中で注目を浴びている。舩曵真一郎社長は入社式で、全社員に25万円を4月に配ることを公表。その直前の3月末には「定時(17時)退社」を経営目標に掲げることも打ち出した。また、社員が出産・育児休業を取得する際、その職場の全員に「お祝い金」を配る制度も23年7月に導入済み。損保業界はさまざまな不祥事が相次ぎ、顧客から厳しい目が向けられている。同社はまず、社員が働きやすい環境をさらに整えることで従業員満足(ES)を高め、信頼回復への歩みを速める考えだ。

 「今年を、会社が目指すべき姿(ミッション)と提供すべき価値(バリュー)を社員全員で共有した上で、目指すべき未来像をともに創り上げていく再スタートの年にする」―。舩曵社長は4月1日の入社式で、社員全員に25万円を配ることへの思いを明らかにした。

同社を含めた損保大手4社は、法人向け企業保険の価格調整(カルテル)問題で金融庁から23年12月に行政処分を受けた。ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)による自動車保険金の不正請求問題でも不適切な対応が浮き彫りになった。そこから再生する、という決意表明だったようだ。その最前線に立つ全社員に、かなりの金額を支給することで鼓舞していく狙いとみられる。同社が公表している従業員数は約1万3千人弱。単純計算で数十億円かかるとみられる。船曳社長は「新入社員にも配るが、来年の新入社員はもらえないでしょう」と付け加えた。

17時退社も経営目標に掲げた。大手企業では珍しい。同社は2017年度に「19時前退社ルール」を導入し、最近定着してきたという。社員の私生活の充実や人材確保の両面から、さらに一歩進めた目標を掲げることにした。

出産・育児を職場全体で祝い、快く受け入れる企業風土をつくるため、職場全員に給付する「育休職場応援手当(祝い金)」の制度も昨夏に取り入れた。取得する休暇の日数や職場の人数に応じ、1人当たり3千円から10万円を支給する。人数が少なく仕事をカバーする分量が多くなりそうな職場ほど多くなる仕組みだ。24年2月時点で、対象になった育休取得者は約360人(女性約250人、男性110人)だったが、祝い金の受給者は延べ7千人に上った。同社によると、育休は男性の1カ月取得が定着しているものの、この期間を超える取得者が少ないという。祝い金制度も活用し、もっと休みやすい環境をつくる考えだ。

他の損保の社員は「『えっ』と思うような手厚い良い制度を導入していて注目せざるを得ない」「社員の採用でも良い効果が出てくるのではないか」と、三井住友海上の取り組みを評価している。いち早く信頼回復への道筋がつけるなど成果が認められれば、改めてESの充実に取り組む競合勢も出てきそうだ。

(小山田 研慈)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月16日号より