日刊自動車新聞社が四輪・二輪車メーカー14社を対象に実施した採用アンケートで、2023年度(24年4月入社)の採用人数が前年度実績を越えたのは7社だった。事務系は10社、技術系は9社が前年を上回った。ただ、採用計画を必ずしも充足したわけではない。ITやスタートアップ、起業など優秀な学生の選択肢が広がるなか、引き続き、採用活動に知恵を絞ることになりそうだ。
23年度の採用実績について、未回答の2社を除く12社のうち「計画通り」と答えたのはトヨタ自動車、スバル、三菱ふそうトラック・バス、ヤマハ発動機の4社にとどまった。計画通りと回答したものの「事務・技術系はほぼ計画通りだが、技能系は予定数よりもかなり下回った」(三菱ふそう)、「全体的には採用数を確保できたが、一部専攻の採用の獲得に苦戦」(ヤマハ発動機)など、すべての職種で十分な人数を確保できたとは言い難い状況だ。
計画より少ないと回答したのは8社。学生が就職活動で有利な「売り手市場」でどの職種も学生を確保するのが難しくなっている。特に、少子化や大学進学率の上昇で採用が難しくなっているのが生産現場を担う技能系の人材だ。
UDトラックスは「活動量を増やしたが、生徒数と就職希望者数が昨年よりもさらに減っており、苦戦した」と振り返った。日野自動車も「(技能系人材の採用は)逆風が強くなっており、採用を強化したが目標を大幅未達」と回答した。同社は23年度採用活動から、技能系人材の確保に向けて企業パンフレットを新しくし、入社後の配属工場を確約する求人票を東京都と群馬県、茨城県に限定して出した。また、岩手県や宮城県、福岡県などでも会社説明会を開くなど、技能系人材を獲得する工夫を凝らす。
ダイハツ工業は、22年に本社工場(大阪府池田市)の量産車生産を京都工場(京都府大山崎町)に移管したため「大阪の学生を採用しづらくなった」と回答した。
開発などを担当する技術系人材の確保も依然として厳しい状況だ。スズキは、インターンシップ(就業体験)など「企業の理解度を高めるための対応が不足していた」と〝反省の弁〟を述べた。いすゞ自動車は、〝配属ガチャ〟に配慮し、入社前に初期配属先を確約しているが「売り手市場で特に技能系と大卒の理系人材で苦戦した」と回答した。
少子化により、就職活動での売り手市場はしばらく続く見込み。特に電動化やSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)化に対応しようと、各社が採用を増やしている技術系人材の「電気・電子系」「情報系」の人材は、IT系や金融系などでも人気で、争奪戦が常態化している。
ホンダは「学生による企業の見極め要素が強くなっていく。企業PRだけではなく、学生のニーズをとらえたキャリア支援のような試みが重要だ」と指摘する。また、会社の魅力だけでなく「各職種やキャリアの魅力を訴求できる活動を展開する」(いすゞ自動車と三菱ふそう)ことで、各社は応募者数を増やしていく考えだ。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月16日号より