コロナ禍を経て、対面やデジタルツールなど、さまざまな採用・情報発信の手法が広がっている。日刊自動車新聞が自動車部品メーカー93社を対象に実施したアンケート調査では、約84%の企業が「学生との接点拡大への新たな取り組みや強化策をとった」と回答した。各社とも多様なアプローチで、少しでも接点を増やそうと取り組む。
■コロナ禍の収束で対面開催に力
各種のイベントや面接で、リアルとオンラインのハイブリッド開催が一般的になった。ただ、コロナ禍がほぼ収束し、対面での接点をなるべく増やそうという企業は多い。インターンシップ(就業体験)や説明会関連が柱の一つだ。
目立つのは、ダイレクトスカウトの強化だ。NOKやジーテクト、GSユアサ、タチエス、TPR、日本ピストンリング、ユニプレスなどが、「導入や強化に取り組んでいる」と回答した。
インターンシップでも、さまざまな人事関連施策で定評のあるボッシュは「受け入れ人数を拡大している」と答えた。「インターンシップ体験部署を拡大し、人数も増やした」(曙ブレーキ工業)、「女性採用の強化へ女性社員による説明会を開いた」(アーレスティ)などの回答が寄せられた。「ベトナムで説明会を開いた」(車載機器メーカー)など、地域や属性をより多様化させようとする態勢になっているようだ。
各社は地道なアプローチも欠かさない。「学校訪問を前年度比で3倍に増加させた」(日本ピストンリング)といった回答のほか「会社で出展する展示会での採用イベントチラシ配布」(ジヤトコ)と、展示会に来場する学生層を想定し「一石二鳥」の効果を狙った取り組みもみられる。
■国公立理系はウェブ活用に熱心
並行してデジタルツールの活用も広がる。「ウェブ面談で社員と1対1の交流機会を設けた」(NTN)、「SNS(交流サイト)を活用した情報発信」(住友ゴム工業)、「ウェブ広告・CM活用、インスタグラム立ち上げ」(大同特殊鋼)などの動きだ。ある中堅部品メーカーは、オウンドメディアで社員の働きぶりの情報発信に努める。担当者は「より親近感を持ってもらえれば」と意図を説明する。
実際、学生の情報入手経路も多様化している。人材サービス会社などでつくる全国求人情報協会が昨夏にまとめた23年卒の学生向けアンケートでは、最終的な就職予定先の認知経路は、大学生・大学院生ともに「民間の就職情報会社の就職情報サイトや情報誌、各種イベント」の割合が最も高いものの「大学の就職情報サイトや情報誌、各種イベント」も増えている。SNSや口コミなどウェブサイトの利用も増え、特に国立理系で顕著だった。
しかし、日刊自動車新聞のアンケートで、ある企業は「ナビ媒体の業者に踊らされている感じ」とも吐露した。今の就活環境について「一時的な市場の過熱ではなく、新卒一括採用というスキームの限界」とみる企業も多い。ナビ型、また新卒採用の重要性は踏まえつつ、企業側・学生側にとって最適な接点づくり、アプローチの手法は何か。時代や価値観、技術の変化とともに今後も模索が続きそうだ。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月11日号より